2009 Fiscal Year Annual Research Report
北東太平洋カスカディア地域メタンハイドレートの有機地球化学的研究
Project/Area Number |
08J06161
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
金子 雅紀 Kyushu University, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 膜脂質バイオマーカー / 安定炭素同位体比 / 続成作用 / ガスハイドレート / メタン生成 / 極性脂質 / メタン |
Research Abstract |
統合国際深海掘削計画(IODP)の第311次航海において採取した、ガスハイドレートが濃集する掘削堆積物コア試料(掘削深度300m,25試料×2地点)からアーキアおよびバクテリアの膜脂質バイオマーカーの分布および同位体組成を明らかにした。特に本年度は、生きた微生物の指標となる極性膜脂質の分析に挑戦し、成果を上げた。これにより、前年度に行った、本堆積物試料中の微生物の分布と代謝活動における考察の裏付けおよび、補強を行うことができた。また、間隙水の無機化学や、メタンの炭素・水素同位体組成、堆積学などのデータから多次元的に考察を行い、ガスハイドレート地域における微生物の分布と活動において世界で初めて包括的なモデルを構築した。 それによると、アーキアは100m以深の堆積物深層で生物量が顕著に増大しており、従属栄養的に生きるクレンアーキオタが主要なバイオマスを占めていることを明らかにした。このクレンアーキオタは有機物の初期続成作用において重要で、嫌気的発酵分解生成物としてCO_2,H_2,NH_3,リン酸などを放出している。クレンアーキオタの生物量が増大している深度の直上(100-200mbsf)ではメタン生成菌の生物量が増大していることが膜脂質バイオマーカーの分布と同位体組成から示唆された。このことから、メタン生成菌はクレンアーキオタの活動による有機物の発酵分解によって生成され、メタン生成の気質であるCO_2およびH_2や、NH_3やリン酸などの栄養塩に強く依存していることが分かった。 このように、ガスハイドレート地域における微生物の分布を支配している要因について明らかにした。
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