2008 Fiscal Year Annual Research Report
現代社会科学における合理的選択論の展開-80年代合衆国での方法論的転換を中心に-
Project/Area Number |
08J06211
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西本 和見 Nagoya University, 大学院・経済学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 合理的選択論 / 合理性 / 経済学史 |
Research Abstract |
本研究は、合衆国を中心に政治学と社会学を中心に戦後社会科学に広がりを見せている合理的選択理論の史的展開を、経済学史の立場から、合理的選択論についてこれまで紹介されてきたような経済学帝国主義という一般的理解でも、政治学や社会学でのロビンソンクルーソー的人間観に基づくミクロ経済学方法論の一面的批判でもなく、多様な方法論的広がりを持つアプローチとして、総合的・実証的に分析することを目的としている。採用第1年度目の研究は、政治学と経済学の関係を中心に次のように進行した。 1.戦後政治学の合理的選択論の展開整理と、その科学史的分析。戦後の合理的選択理論の展開を、近代経済学史の科学史的研究の視点を取り入れ、捉えなおした。本研究が基づく科学史的研究は、T.クーンやI.ラカトシュに代表される知識の成長の理論、特にD.ハウスマンのアプローチを研究の中心的視角として取り入れている。彼はミクロ経済学では「合理性rationality」概念が重要な意味を持つと考えており、この合理性概念は本研究の重要な概念となる。本研究は、80年代を境に、初期合理的選択論の方法と80-90年代の合理的選択論の方法を、合理性概念に注目して比較する上で重要である。また、経済学者による初期合理的選択論のアプローチを再評価できるという意味で意義がある。2.The American Political Science Review誌、The American Sociological Review誌の合理的選択論関係の論文の増加と、制度主義との関連した合理的選択論関係の論文の増加を調査した。これにより、80年代以降は制度主義との関連で合理的選択論の論文が学術誌レベルで増加したことが分かった。これは、制度と合理的選択論の結びつきを、80年代を中心に扱う基礎となる点で意義と重要性がある。
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Research Products
(2 results)