2009 Fiscal Year Annual Research Report
大脳皮質の高次機能発現におけるPax6の役割の解析
Project/Area Number |
08J06221
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
梅田 稔子 Tohoku University, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 大脳皮質 / Pax6 / 層形成 / 神経細胞産生 / セロトニン |
Research Abstract |
転写因子Pax6遺伝子は発生期の大脳皮質原基に発現し、皮質形成に重要である。ヒトにおいてPAX6遺伝子にヘテロ接合変異が生じると大脳半球の容積減少及び機能障害を示すことが報告されている。さらに近年、自閉症の連鎖解析からPAX6を含む染色体領域の重要性が明らかにされた(Maekawa et al., Neurosci, Lett, 2009)。これらのことから、Pax6遺伝子の変異が、大脳皮質形成異常を引き起こし、行動・認知異常の原因となっている可能性が示唆された。そこで本研究ではPax6ヘテロ接合変異ラット(rSey^2/+)が自閉症モデル動物として見なせるか検討している。 セロトニンは脳内で神経伝達物質として行動に重要な役割を果たすことが知られており、また自閉症患者の約30%において全血中のセロトニン量が増加していることが報告されている。自閉症患者におけるセロトニン量の異常について詳細な原因は解明されていない。しかしながらさらにシナプス間隙のセロトニン量を検討することは行動異常と神経機能の関連を考慮するのに重要である。血中に含まれるセロトニンはセロトニントランスポーターを介して99%が血小板中に取り込まれるため、無血小板血漿中のセロトニン量を測定することにより、脳内におけるシナプス間隙のセロトニン量を間接的に推測することができる。そこで、福島医科大学小林和人教授との共同研究により今回高速液体クロマトグラフィーを用いて成体ラットの無血小板血漿中を定量した。解析の結果、野生型ラットに比べrSey^2/+ラットのセロトニン量は減少傾向を示した。この結果からrSey^2/+ラットでは、脳内のシナプス間隙に存在するセロトニン量が減少し、行動異常を引き起こしている可能性が示唆された。
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