2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J06329
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
大出 裕高 National Institute of Infectious Diseases, 病原体ゲノム解析研究センター・第2室, 特別研究員(PD)
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Keywords | HIV / ウイルス / 分子動力学 / 基質選択 |
Research Abstract |
HIV-1プロテアーゼは、感染細胞内で、HIV-1の前駆体蛋白質中の10箇所程度の切断箇所を"順序よく"切断していく。この順序だった切断はHIV-1の増殖に必須であるものの、その制御機構はいまだにはっきりと理解されていない。 報告者は、平成20年度において、既報の7種の8残基ペプチドのHIV-1プロテアーゼによる切断反応速度定数1/Kmおよびkcatと相関性を持つ構造的特徴を計算科学的手法(レプリカ交換分子動力学法およびホモロジーモデリング法)によりそれぞれ見出した。1/Kmが大きいペプチドは、プロテアーゼと非結合時において、切断されるペプチド結合をはさんだP1位およびP1'位の側鎖が逆向きの配向をとりやすかった。一方、kcatが大きいペプチドは、プロテアーゼと結合時において、切断されるペプチド結合の平面と、そのすぐ上流のペプチド結合平面の間の二面角が大きくねじれていた。 報告者は、平成21年度において、さらに上記構造的特徴の重要性を検討すべく、反応速度定数と相関するその他の特徴を探索した。しかしながら、上記特徴以上に1/Kmあるいはkcatと相関性を持っ構造的特徴は見出せなかった。つまり、上記特徴が、もっとも反応速度に重要な因子であることが示唆された。 さらに、8残基ペプチドの切断反応速度定数から得られた構造的特徴のみで、前駆体蛋白質の切断反応における切断速度を説明できるかを、上記と同様の計算科学的手法にて検討した。結果、Gag中の3種の切断点についてアミノ酸変異の影響を解析したところ、すべてのアミノ酸変異の切断速度への影響を、上記の構造的特徴のみで説明することはできなかった。ゆえに、他の因子が前駆体蛋白質において関わることが示唆された。 これらの結果は、HIV-1の増殖の理解、ならびにHIV-1プロテアーゼの新たな阻害薬の開発を手助けする基盤情報を提供している。
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Research Products
(7 results)