2009 Fiscal Year Annual Research Report
光誘起カー回転測定による量子ホール状態の電子スピン・核スピンダイナミクスの研究
Project/Area Number |
08J06429
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
福岡 大輔 Chiba University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 2次元電子系 / 量子ホール効果 / 磁気光カー回転 / 量子ホール強磁性 / Skyrmion / TRKR / 横スピン緩和時間 |
Research Abstract |
2次元電子系に垂直な磁場を印加した際に現れる量子ホール系は、軌道運動の量子化に伴う電子相関の顕在化より、多彩な電子状態・スピン状態を呈する凝縮相が発現する。本研究は高感度・高分解能なスピン計測が可能な光誘起時間分解カー回転測定(TRKR測定)を、高移動度2次元電子系を有するGaAs/AlGaAs量子井戸構造試料に適用し、量子ホール凝縮相のスピンダイナミクスを探った。その結果、量子ホール強磁性相における準粒子,Skyrmionの生成ダイナミクスと電子スピン緩和への影響を示し、量子ホール系におけるスピン緩和時間の全貌をはじめて明らかにした。 スピン緩和時間は軌道の量子化と伴に増大し、量子ホール強磁性となる奇数ランダウ占有数においてピークを呈した。これは量子ホール強磁性におけるspin-wave : Goldstone-modeの安定化によるものと考えられる。 しかしながら低次奇数占有数において、Skyrmionの光生成に伴う著しいスピンコヒーレンスの低下が観測された。2色ポンププローブ法による選択励起TRKR測定によりSkyrmionの光生成プロセスを明らかにし、Skyrmion光生成を抑えた最低エネルギー光学遷移の励起下において量子ホール強磁性本来のスピン緩和時間を観測した。占有数1近傍におけるスピン緩和時間は、静的なSkyrmionの存在により特徴的な様相を呈し、Skyrmion励起が量子ホール強磁性におけるスピン緩和を強く支配している事を示した。また、高次奇数占有数においても同様の結果を得ており、未だ実験的確証が得られない高次奇数占有数におけるSkyrmionの存在を強く示唆する結果となった。
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Research Products
(3 results)