Research Abstract |
これまで,呼吸の数値シミュレーションは,肺気道が複雑形状であるため,Weibelモデルに代表される理想気道モデルを用いた解析が多く行われてきた.そこで,CT画像から抽出した実形状気道モデルを用いて呼吸解析を行い,呼吸解析における実形状モデルの利用の有用性について示した. 1.肺気道実形状モデルを用いる有用性 理想気道モデルは気道を直円管で仮定しているため,過去の多くの気流解析では,比較的単純な流れが観察される.しかしながら,実際の肺気道の断面は真円ではなく,さらに曲率を持つ管であるため,肺内気流の複雑な様子を解析することができた. 2.呼気と吸気の圧力損失の評価 気管での流量Q_Tと,境界条件として与えた気管と末梢気道との圧力差|ΔP|との関係を解析した.この結果,Q_Tが呼気と吸気で等しいとき,|ΔP|は吸気よりも呼気で大きくなることがわかった.一般に,管内流れにおける流入口と流出口の圧力差ΔPは,圧力損失(形状損失+摩擦損失)ΔP_Vと流入口と流出口の動圧の差ΔP_Kの和となる.そこで,流体解析結果からQ_TとΔP_Vの関係を解析した.解析結果から呼気と吸気でQ_Tが等しいとき,ΔP_Vもほぼ等しくなることがわかった.このことより,呼気と吸気でQ_Tが等しいとき,圧力差ΔPに違いが発生するのはΔP_Kの影響であることが示された.流入口と流出口の間の動圧ΔP_Kは,その断面積の差により生じ,今回のモデルにおいて気管断面積は2.46[cm^3],全末梢気道断面積の総和は7.05[cm^3]であった。呼気と吸気では全く異なる流れ構造を形成するにも関わらず,ΔP_Vがほぼ等しくなる点に関して,今後,詳細な解析を進めていく.
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