2008 Fiscal Year Annual Research Report
句構造構築の基本操作に課される諸条件と言語間の語順変異に関する比較統語論研究
Project/Area Number |
08J06511
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
瀧田 健介 Nanzan University, 人間文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 理論言語学 / 比較統語論 / 適正束縛条件 / 句構造 / 循環的線状化 |
Research Abstract |
平成20年度は、句構造構築の最も基本的な操作であると仮定されている併合の適用を制限する条件の一つとして提案された派生的適性束縛条件について、その理論的・経験的基盤を検証した。具体的には、派生的適性束縛条件が持つ理論的問題を指摘し、派生的適性束縛条件の根拠とされてきた経験的事実がそれとは独立に提案された循環的線状化の理論および項認可の原理によって説明されうることを示し、派生的適性束縛条件をそれが引き起こす理論的問題とともに棄却することを提案した。また、関連する現象として日本語の右方転移構文をとりあげその統語的特徴を分析し、上で述べた研究の方向性が支持されることを示した。具体的には、数量詞及び否定極性項目の一種であるシカ句が右方転移された構文を詳細に検討し、その派生に項削除という操作が関わっていることを明らかにした。さらに、右方転移構文の先行研究のなかでも、上で述べた循環的線状化の理論と親和性のある分析にのみ項削除が自然に組み込めることを示し、派生的適性束縛条件を棄却した理論がより広い経験的事実を説明しうることを論じた。また、この研究の過程で、項削除という操作そのものを独立に支持する経験的事実を発見することができた。具体的には、上で述べたシカ句がどのような統語的環境において省略されうるかを詳細に検討し、項削除を用いた分析のみが観察された事実を説明することができることを明らかにした。これにより、日本語の、ひいては自然言語の省略現象にも本研究が寄与しうることを示すことができた。
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Research Products
(3 results)