2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J06544
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平井 勇介 Waseda University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然再生事業 / 自然認識 / 自然の共同利用 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在失われつつある自然を復元するという目的を掲げる自然再生事業が、どういった問題に直面しているのかを明らかにし、その問題を解決するための政策を提言することである。今までの研究成果や私の研究成果から、自然再生事業が抱えている大きな問題として、その事業に携わる様々なアクターの中での自然認識の相違が挙げられる。なかでも、復元の対象となっている自然に恩恵を受けてきた地域住民の自然認識は、都市住民やNPOなどの事業の主要な担い手がもっている自然認識とは大きな違いが見受けられる。 そこで、まずは地域住民の自然認識について理解することが不可欠と考え、この一年間、自然再生事業がおこなわれている地域の住民、住民組織を中心に聞き取り調査を試みている。地域住民は、これまで主に生産活動を通して自然とかかわってきた。自然を共同利用するうえで、たとえば新田開発村である事例地では、親戚関係や本分家関係、近隣関係などのつき合い関係を基盤として、生産活動をおこなってきた。そうしたつき合い関係は、技術発展などの近代化の過程で、以前と比べてあまりみられなくなっているが、自然再生事業という問題が地域に生じた際に、そのつき合い関係を通じて住民組織を立ち上げることとなった。そのため、自然再生事業に対して地元の意見を提示する住民組織は、これまでのつき合い関係に配慮しながら、自然再生への意見を提示する傾向をもっている。つまり、彼らの自然再生事業への意見を支える自然認識は、そうした過去から現在までのつき合い関係と相互に関係し合っているのである。今後、そうしたつき合い関係の変遷を詳細に把握したうえで、自然再生事業への地域住民の意見を支える自然認識について理解を深めていく予定である。
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