2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J06544
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平井 勇介 Waseda University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 自然再生 / 意思決定 / 地域社会 / 自然の共同利用 / 自然認識 |
Research Abstract |
本研究の目的は、失われつつある自然を復元するという目標を掲げる自然再生事業が、現在どういった問題に直面しているのかを明らかにし、その問題を解決するための政策を提言することである。これまでの諸研究の成果や私の研究成果から、自然再生事業が抱えている課題として、その事業に携わる様々なアクターの自然認識の相違が挙げられる。ただし、認識の相違自体が問題なのではなく、それによって対話がままならない状態になっていることが問題であると私は捉えている。なかでも、復元の対象となっている自然に恩恵を受けてきた地域住民の自然認識は、都市住民やNPOなどの事業の主要な担い手がもっている自然認識とは大きな違いがある。 そこで引き続き昨年度(2009年度)も、自然再生事業がおこなわれている地域の住民や住民組織への聞き取り調査をおこなってきた。地域住民が自然再生事業へ意思表明する際の意思決定過程を主に分析することによって、これまでの自然利用の在り方や自然をめぐる人間関係が、彼らの自然認識や現在の意見に大きな影響を与えていることが示された。この調査結果は、自然再生を考える上で見過ごしてはならない事実であると考えている。なぜならば、自然再生事業に地域住民を動員する場合、自然の重要性を訴えることよりも、その地域社会の人間関係や経験に対して優先的に配慮する必要があるということが実証的に示されたからである。 今後は、それぞれのケーススタディーを理論的に検討することで、地域住民の納得のいく自然再生事業を実現するためには、どのような対話条件下におけるアクター間の討議が必要であるのかという点について考察をする予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article]2010
Author(s)
平井勇介
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Journal Title
『霞ヶ浦の環境と水辺の暮らし』2章「子どもの活動からみたローカル・ルール」(鳥越皓之編)(早稲田大学出版会)
Pages: 39-62
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