2010 Fiscal Year Annual Research Report
十一世紀を中心とする東アジア国際関係史の研究-特に契丹(遼)史の視点から-
Project/Area Number |
08J06597
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
毛利 英介 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 遼 / 契丹 / 五代 / 北宋 / 西夏 / 高麗 |
Research Abstract |
研究発表としては、まず前年度に口頭発表を行った遼(契丹)・宋間で使用された「白箚子」と称される文書について、更に検討したうえで本年度において文章にまとめた。口頭発表では、1042年に遼宋間で行われた交渉について発表を行った。この交渉が遼宋関係の遼優位での固定化を招いたことはこれまでも注意を喚起してきたが、その交渉の具体的推移や当時の遼の国内情勢との関係についてはまだ検討の余地が残されていた。同報告はその空白を埋めるものである。その結果、遼宋交渉における誓書等の文書使用の具体例が更に明確になったほか、同交渉が当時の遼国内の情勢に基づき遼・興宗皇帝の政治的アピールのために行われたことが明らかとなってきた。 現地調査としては、2011年3月に中国陜西省西安市を訪問した。具体的な調査対象は西安碑林博物館・陜西省歴史博物館・乾陵等である。西安碑林博物館では北宋の「安守忠墓誌銘」に注目した。この人物は、五代以来の高級武官の家系に属するが、「安」という姓に見られるように近年いわれるソグド系突厥であり、五代から北宋初の一貫性、そこにおける非漢族的要素の存在を象徴する人物である。そして、この人物が遼との最前線である雄州の長官に任じられた事実が知られる。今回の調査を踏まえ今後より深い考察を行いたい。陜西省歴史博物館では、まさにその安氏のソグド人である安伽の墓葬に関する展示を見学することが出来た。乾陵は唐の高宗と則天武后の夫婦合葬墓であり、唐の文化に強い影響を受けている遼の陵墓との比較において必ず参照されるべき陵墓の一つである。更に、その墓道に立つ「無字碑」には金代に契丹文字が刻まれ、それは1970年代以降現在につながる契丹文字研究の端緒となった史料であるが、これも今回実見することがかなった。その他、本研究では東北アジア史学史の研究をも射程にいれているため、中国東北地方の軍閥であった張学良が引き起こしたいわゆる西安事件に関わる史跡も訪問した。
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Research Products
(2 results)