2009 Fiscal Year Annual Research Report
東京湾における海草メタ個体群の長期空間動態および維持機構の解明
Project/Area Number |
08J06598
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
渡辺 健太郎 Chiba University, 大学院・自然科学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | アマモ / 海草 / メタ個体群 / 種子分散 / 漂流ハガキ / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
海草の1種アマモは種子を保持した花枝が海面を漂流することによって広範囲に種子分散をすると言われている。そこで今年度は、東京湾内でメタ個体群を形成している複数の局所アマモ場からの種子分散過程の解明を重点的に行った。そのため昨年度、予備的に行った漂流はがき実験および海水流動モデル上での数値シミュレーションの2つの方法を改良し、大規模かつ詳細に行った。 漂流ハガキ実験は、浮力を調節した返信ハガキを散布し、それがどこに漂着したか拾得者に書いて郵送してもらうという方法で実施した。アマモの花枝の流出が最も多いと考えられる5、6月の大潮に、東京湾内でアマモ場が見られる5ヶ所および湾奥1ヶ所の計6ヶ所でハガキを合計9000枚散布した。その結果、回収されたほとんどのハガキは東京湾内に漂着しており、その移動方向および距離には、風向と風速が強く影響することが判明した。また一部は東京湾外へも流出し、強い北風が卓越していた場合最も遠くは駿河湾からも回収されたが、相模湾沿岸に多くのハガキが漂着したことから、東京湾のアマモ個体群と相模湾の個体群との間にある程度頻繁な遺伝子の交流があることが示唆された。海水流動モデルでは、2006年および2007年における実際の気象データをもとに、海流による種子の分散過程をシミュレーションすることで、湾内5ヶ所のアマモ場から流出した種子が東京湾内のどこへ分散しているか推測した。その結果、アマモの種子は風の影響を強く受ける吹送流によって運ばれ、ある程度時間が経過すると東京湾全体に広がること、特に東京湾最大の富津干潟のアマモ場から他のアマモ場へ多くの種子が供給されている可能性が示された。
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