2008 Fiscal Year Annual Research Report
水供給における腸管系ウイルス監視のためのウイルス粒子検出法開発及び感染リスク評価
Project/Area Number |
08J06610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北島 正章 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ノロウイルス / サポウイルス / アイチウイルス / 水系感染症 / 水処理 / 遺伝子解析 / 河川水 / 下水 |
Research Abstract |
多摩川河川水および下水(流入水および処理水)を対象に、試料中の腸管系ウイルス(ノロウイルス、サポウイルスおよびアイチウイルス)の遺伝子をPCRにより増幅し、塩基配列を決定してこれらの腸管系ウイルスの遺伝的多様性および水環境中における季節変動を解析した。その結果、今回解析対象とした環境水試料中には遺伝学的に多様なノロウイルス株が存在することが明らかとなった。ヒトに感染するノロウイルスは遺伝学的に異なる合計32種類以上の遺伝子型に分類されるが、異なる遺伝子型はウイルス粒子の表面構造のアミノ酸配列の違いから異なる抗原性を示すことが既に明らかにされている。このノロウイルスの遺伝的多様性こそが、毎年流行を繰り返す原因の一つであり、ノロウイルス感染症の抑制を困難にしている理由の一つでもあると考えられる。 さらに、上記の環境水試料中からこれまで水環境中からの検出事例が少ないサポウイルスおよびアイチウイルスを検出することにも成功した。水環境中から検出されるノロウイルスおよびサポウイルスは遺伝学的多様性に富むのに対し、アイチウイルスの遺伝学的多様性は乏しいことが明らかとなった。さらに、急性胃腸炎の発生事例の原因に占めるアイチウイルスの割合はノロウイルスおよびサポウイルスよりも低いのに対し、水環境中からの検出頻度はこれらのウイルスよりも高いことを明らかにした。このことから、アイチウイルスは水供給における腸管系ウイルス監視の際の有力なウイルス指標となり得ると考えられた。しかしながら、現時点ではアイチウイルス遺伝子定量のためのリアルタイムPCR系が報告されていないため、水環境中における存在量に関しては解析できないのが現状である。そこで、現在アイチウイルスのリアルタイムPCR系の開発に取り組んでいる。
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Research Products
(2 results)