2009 Fiscal Year Annual Research Report
水供給における腸管系ウイルス監視のためのウイルス粒子検出法開発及び感染リスク評価
Project/Area Number |
08J06610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北島 正章 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | インフルエンザウイルス / ウイルス濃縮法 / 水処理 / 不活化 / 塩素消毒 / 感染リスク評価 / Dose-Responseモデル / 二次感染 |
Research Abstract |
H1N1およびH5N3亜型に属する2種類のA型インフルエンザウイルスを使用し、水中のインフルエンザウイルスの濃縮法の開発に取り組んだ。陽電荷膜および陰電荷膜を使用した既存の濃縮法によるインフルエンザウイルスの濃縮回収率をリアルタイムPCRおよびプラックアッセイにより測定したところ、これらの濃縮法はインフルエンザウイルス粒子の濃縮には適さないことが明らかとなったため、インフルエンザウイルス粒子を効率良く濃縮するための新たな濃縮法を開発した。 また、水の消毒法として広く使用されている遊離塩素、モノクロラミンおよび紫外線消毒におけるインフルエンザウイルスの感染力価およびウイルスRNAの消長を解析した。インフルエンザウイルスは、通常の上水処理で施されている塩素消毒および紫外線消毒により速やかに不活化することが分かった。さらに、既に報告されている他のウイルスの実験結果と比較したところ、インフルエンザウイルスは,塩素,モノクロラミンおよび紫外線のいずれの消毒処理についても腸管系ウイルスよりも速やかに不活化することを明らかにした。 続いて、米国・Drexel大学のHaas教授の指導のもとでH5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染リスクの定量的評価モデル開発に取り組んだ。感染リスクを計算するためにはDose-Response関係式が必要不可欠であるが、これまでH5N1ウイルスのDose-Responseモデルは報告されていない。また、ヒトにおけるH5N1感染は感染後経時的に致死率が上昇するため、感染から死亡までの時間を考慮したモデルの開発が必要であると考え、従来型Dose-Responseモデルに時間項を組み込んだTime-Dose-Responseモデルを開発した。さらに、遊泳による水系感染(一次感染)および空気を介した二次感染リスクを評価するためのモデルを開発した。H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルス感染リスクを定量的に評価するための基礎的モデルを構築することに成功したと言える。
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