2010 Fiscal Year Annual Research Report
水供給における腸管系ウイルス監視のためのウイルス粒子検出法開発及び感染リスク評価
Project/Area Number |
08J06610
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北島 正章 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ノロウイルス / アイチウイルス / サポウイルス / 分子疫学的解析 / Real-time RT-PCR / 遺伝子型 / 感染リスク評価 / 水環境 |
Research Abstract |
本年度は、まずGenogroup IVノロウイルスに特異的なSemi-nested RT-PCRを開発し、多摩川河川水および下水試料からのGenogroup IVノロウイルスの検出調査および遺伝子解析を実施した。その結果、環境水試料中から冬期に高頻度に検出される傾向が認められ、遺伝学的に多様なGIVノロウイルス株(新たに見出された遺伝クラスターを含む)が環境水中に存在することが明らかとなった。 また、前年度に開発したアイチウイルスのReal-time RT-PCRを使用して下水および河川水中のアイチウイルスの挙動を定量的に解析するとともに、その遺伝的多様性を解析した。検出されたアイチウイルスのほとんどがGenotype Aに分類されたことから、今回調査対象とした地域では、主にGenotype Aに属するアイチウイルス株が年間を通じて流行していると考えられる。アイチウイルスは水試料から年間を通じて検出され、ノロウイルスやサポウイルスよりも水環境中に優占して存在していることが示唆された。本研究は、下水および河川水中におけるアイチウイルスの挙動を定量的に解析した初めての研究事例である。 サポウイルスについても、国内で採取した下水試料中における存在状況、季節変動および遺伝的多様性を解析した。その検出率は冬期に高く、検出株の分子系統解析を実施したところ、今回検出された株は10種類の遺伝子型に分類された。本研究で得られた結果は、下水中におけるサポウイルスの存在状況、季節性、そして遺伝子型分布に関する新たな知見であり、冬期を中心として遺伝学的に多様なサポウイルスが日本のヒト集団と水環境の間を循環していることが明らかとなった。 上記の結果を含むこれまでの「水中ウイルスの検出法開発およびリスク評価」に関する研究成果について、学術雑誌上に査読付き論文の形で発表している。今年度は、筆頭著者論文と共著論文とを合わせて計10報の査読付き論文が学術雑誌に掲載された。
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