2009 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類に対する社会環境エンリッチメント手法の比較認知科学的検討
Project/Area Number |
08J06611
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小倉 匡俊 Kyoto University, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 動物福祉 / 環境エンリッチメント / ニホンザル / 視覚 / 社会性 / 動画 / 操作性 |
Research Abstract |
本年度は個別ケージ飼育のニホンザルを対象に、視覚環境に対する要求として「操作性」について検証し、昨年度調べた「動画の内容」とあわせて環境エンリッチメントとしての効果を評価した。2つのタッチパネルをニホンザルの飼育ケージに対提示した。片方のタッチパネルではニホンザルのタッチ反応とは関係なく自動的に動画が再生され、もう片方のタッチパネルではニホンザルがタッチ反応をおこなった時のみ動画を再生した。両方のタッチパネルで再生される動画の内容は完全に同一のものとした。タッチ反応というコストを負ったとしても得られる動画は自由に見ることのできる動画とまったく同じであるにもかかわらず、タッチ反応による動画再生が持続した。また、自動再生の動画よりも反応に基づいて再生される動画に対して高い割合で注視した。これにより、動画再生において操作性そのものが価値を持つこと、操作性が動画の価値を高めることが明らかになった。この「操作性」と、昨年度の研究で調べた「動画の内容」について、環境エンリッチメントとして実際に応用した際の効果に与える影響について評価した。その結果、動画呈示をおこなっていない条件で異常行動が激しい個体において、動画呈示による異常行動の減少がみられた。また、内容の違いが異常行動の軽減効果に影響を与えた。操作性の有無については影響が見られなかったが、ケージサイズとセンサー検知範囲の割合、および実験実施期間の短さが影響したと考えられる。以上の研究から、個別ケージ飼育ニホンザルに対するエンリッチメントとしての動画呈示の利用において、操作性に対する要求を持ち、動画内容および操作性が効果に影響することが明らかになった。
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Research Products
(6 results)