2010 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類に対する社会環境エンリッチメント手法の比較認知科学的検討
Project/Area Number |
08J06611
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小倉 匡俊 京都大学, 霊長類研究所, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 動物福祉 / 環境エンリッチメント / ニホンザル / 視覚 / 社会性 / 動画 / 操作性 |
Research Abstract |
昨年度までにおこなった研究から、個別ケージ飼育ニホンザルは動画の「内容」に対して選好性を持つこと、動画に対する「操作性」が価値を持つことが明らかになった。本年度は、これらの動画が備える要素について、環境エンリッチメントとして実際に応用した際の効果に与える影響を評価した。個別ケージ飼育ニホンザルを対象とし、動画呈示による異常行動の軽減効果を調べた。また、動画呈示中に内容や操作性を変化させ、その効果を検証した。実用化を見据え、実施にかかるコストの軽減と動画刺激の新奇性の保持および内容の統制を両立させるため、インターネット上の動画共有サイトから動画を自動的に呈示するシステムを構築した。また、動画に対する操作性を付加するため、赤外線距離センサーを応用した装置を組み込んだ。その結果、動画呈示をおこなっていない条件で異常行動が激しい個体において、動画呈示による異常行動の減少がみられた。また、内容の違いが異常行動の軽減効果に影響を与えた。操作性の有無については影響が見られなかったが、ケージサイズとセンサー検知範囲の割合、および実験実施期間の短さが影響したと考えられる。同様の実験を、ペア飼育ニホンザルを対象として継続しており、動画呈示の持つ異常行動の軽減効果の普遍性と飼育環境の影響を検討している。 また、個別ケージ飼育ニホンザルが持つ社会環境に対する欲求について、動画呈示により充足させる可能性を調べた。それぞれ別々の個別ケージで飼育されているニホンザル同士をリアルタイム中継の映像でつなぎ、社会的な交渉を可能とするシステムを構築した。このシステムにより、個体同士の同居にかかるコストを軽減し、また同居させる場合において事前に個体間の相性などを検討できる。呈示した映像に対し注視行動を表出している。映像を通じておこなった社会交渉の内容と頻度について、今後分析を進めていく。
|
Research Products
(6 results)