2010 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸イメージングによる海馬シナプスの放出特性の決定
Project/Area Number |
08J06678
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂本 寛和 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シナプス / グルタミン酸 / イメージング |
Research Abstract |
脳機能の基盤であるシナプス伝達機構を解明することは現在の神経科学における重要な課題である。一つの神経細胞には数個から数万個のシナプスが形成されており、複雑な情報処理がなされている。しかしながら、従来の測定技術では、膨大な数のあるシナプスの内、どこのシナプスがどれだけの情報処理を行っているのかを調べることができない。そこで申請者は神経伝達物質であるグルタミン酸を単一シナプスレベルでイメージングする技術の開発し、個々のシナプスがもつ機能および情報量を詳細に解析することを目的とし研究を行った。本研究において、申請者は初代海馬培養神経細胞上の個々のシナプスにおける活動電位に伴うグルタミン酸放出をリアルタイムでモニタリングする技術を開発した。従来の知見によれば、単一シナプスは神経回路における最小の情報処理装置であり、放出確率を変動させても一度に放出し得るグルタミン酸の量は変動しないと考えられてきた。ところが、実際に単一シナプスレベルでグルタミン酸の放出量を解析してみると、放出確率の変動に伴ってグルタミン酸の放出量も増加及び減少することが明らかとなった。これらの結果は単一シナプスが複数のシナプス小胞開口装置を持っていることを示している。個々のシナプスはOか1の2進的な情報処理方式で伝達を行っているのではなく、状況に合わせてダイナミックに情報伝達量を変動させ得ることを示唆する。さらに、申請者はシナプス個々の特性は空間的に不均一であることを見出した。プレシナプス特性は同じ神経軸索上のすぐ隣に離れたシナプス間であっても強い相関を示さず、それぞれのシナプスが独立に制御されていることを示唆する結果が得られた。以上の結果は、脳機能の基盤であるシナプス伝達機構を理解する上で非常に重要な知見をもたらす。
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Research Products
(2 results)