2008 Fiscal Year Annual Research Report
インスリン/IGFシグナル伝達経路を介するワムシ寿命制御機構に関する研究
Project/Area Number |
08J06702
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
尾崎 依 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | シオミズツボワムシ / インスリン / IGFシグナル伝達 / 寿命 / カロリー制限 |
Research Abstract |
シオミズツボワムシBrachionus plicatilis(以下ワムシ)は水産養殖魚の初期餌料として不可欠であるが、個体群の急激な崩壊が生じることが深刻な問題とされてきた。個体群の崩壊は、豊富な餌条件下にて短寿命でストレス耐性の低下したワムシが急激に増殖し、高密度による低酸素や代謝産物の蓄積に晒されることが一因であると考えられている。そこで、他生物種で栄養摂取に伴う代謝、寿命およびストレス耐性の変化を制御する主要な経路として知られるインスリン/インスリン様成長因子(IGF)シグナル伝達経路のワムシにおける概要を明らかにして、個体群変動機構を解明する一助とすることを目的に研究を行った。 本年度はまず、哺乳類でIGF受容体や受容体基質(IRS)など複数のインスリン様シグナル伝達分子と結合することが知られている14-3-3タンパク質をbaitとして、酵母two-hybridスクリーニングを行った。その結果、インスリン様シグナル伝達分子であるras GAPおよびG3BPを含む47種類のタンパク質断片をコードするcDNAのクローニングに成功した。 続いて、他生物種で寿命に影響をおよぼす可能性が示されている嫌気代謝シフトおよびミトコンドリア数の変化について検討した。その結果、カロリー制限(CR)により寿命の延長したワムシで低酸素耐性が増大することが明らかとなった。また、解糖系酵素のmRNA蓄積量は種々のストレスに安定な定常期の個体群で指数増殖期より高く、嫌気代謝シフトは個体群安定化に寄与すると考えられた。一方で、CRによりミトコンドリアにコードされる遺伝子のmRNA蓄積量が増大するが、ミトコンドリアDNA量の増大は認められず、ミトコンドリア数は増加しないことが示唆された。
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Research Products
(5 results)