2008 Fiscal Year Annual Research Report
ホウ素-窒素相互作用を活用した新規パイ共役電子系化合物の開発
Project/Area Number |
08J06720
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉野 惇郎 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 蛍光 / ホウ素 / アゾベンゼン / イミン / 分子内配位 |
Research Abstract |
蛍光物質は発光デバイスとしての利用や、蛍光プローブ分子としての分子認識への応用において重要である。芳香環同士を含窒素二重結合で連結した構造のアゾベンゼンやイミンは、合成が簡便で性質の調整が容易であり、広範な誘導体の合成が可能であるという優れた点を有しているπ共役分子である。しかし、これらは光異性化や熱振動等のために基本的に蛍光を示さない化合物群であり、有機蛍光体としての利用は困難であった。すでに筆者らは、アゾベンゼンの窒素原子が分子内配位可能な位置にホウ素置換基を配置することでアゾベンゼンに蛍光発光特性を付与できることを報告している。本年度、その窒素原子の一つを炭素原子に代えた構造の2-ボリルフェニルイミン誘導体の合成、構造、蛍光特性、蛍光特性発現の理論的解明、および蛍光特性の制御について検討した。イミン窒素上に種々の置換基を有する2-[ビス(ペンタフルオロフェニル)ボリル]フェニルイミン1を合成した。ヘキサン溶液中、室温で1の蛍光スペクトルを測定したところ、窒素上の置換基の違いに応じて異なる波長の蛍光が観測された。窒素上に炭素置換基を有するイミンでは、イミン部分のπ共役系が大きく置換基の電子供与性が強いほど、より長波長かつ高い蛍光量子収率での蛍光発光を示す傾向があり、置換基を調節することで一般的なイミンであるN-ベンジリデンアニリンの7千倍以上も高い蛍光発光効率を達成した。蛍光性イミンの溶液にシアン化ナトリウムを加えて蛍光スペクトルを測定したところ、蛍光が完全に消失した。反応生成物の解析の結果、シアン化物イオンが炭素-窒素二重結合に付加したことがわかった。以上のように、フェニルイミンにホウ素置換基を導入することで、蛍光特性を容易に調節可能な蛍光性イミンを創製できることがわかった。また、蛍光性ホウ素置換フェニルイミンがシアン化物イオンセンサーとなりうることを見出した。
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Research Products
(7 results)