2008 Fiscal Year Annual Research Report
c軸相関ピンとランダムピンの競合した磁束状態に関する研究
Project/Area Number |
08J06749
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
難波 雅史 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 臨界電流密度 / 磁束ピンニング |
Research Abstract |
高温超伝導薄膜におけるランダムピン・相関ピンが競合した複雑な状態を調べ,超伝導「材料」の磁束ピンニング状態を明らかにするため,相関ピンとしてナノロッド,及び重イオン照射による柱状欠陥を導入した薄膜に関し,幅広い温度・磁場領域の電気抵抗率,不可逆磁場,臨界電流密度を系統的に評価した.BaZrO3(BZO),BaSnO3(BSO)析出物が超伝導体内で柱状に成長したナノロッドの組織観察をTEMにより行い,BZO,BSO添加量の増加に伴うロッド密度の増加,及びBZO,BSOの種類によりロッド径が違うことを明らかにした.さらに,ナノロッド導入による超伝導転移温度の減少は,超伝導体とナノロッドの界面の密度が関連することを初めて明らかにした.磁束ピンニング状態に直接関連した臨界電流密度の磁場印加角度依存性の評価より,磁束と柱状欠陥の密度が一致する磁場(マッチング磁場,〜数T)以下の磁場領域はBZO,BSOナノロッドの密度が磁束ピンニング状態に重要であることが分かった.一方で,マッチング磁場以上の高磁場領域はナノロッド密度と種類,さらにはナノロッドの傾きに依存する多様性に富んだ磁束ピンニング状態が存在することを明らかにした.加えて,素性の良く分かった柱状欠陥を導入した重イオン照射薄膜の評価より,柱状欠陥がマッチング磁場の100倍以上高い磁場においても相関ピンとして有効に働くことを明らかにした.これらの結果は新たな磁束ピンニング状態の存在を初めて実験から示したものである.新たなピンニング状態の理解は,今後の応用超伝導体の高磁場における臨界電流密度の大幅な向上をもたらすものであると期待できる.
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Research Products
(7 results)