2009 Fiscal Year Annual Research Report
c軸相関ピンとランダムピンの競合した磁束状態に関する研究
Project/Area Number |
08J06749
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
難波 雅史 Tohoku University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 酸化物高温超伝導体 / 臨界電流密度 / 磁束ピンニング |
Research Abstract |
c軸相関ピンとランダムピンが競合した複雑なREBa_2Cu_3O_y高温超伝導薄膜における磁束ピンニング状態を理解するため,ピンカの弱い刃状転位,ピン力の強い柱状欠陥,およびピン力が強くその相関方向に分布を持つナノロッドのそれぞれのc軸相関ピンを導入した3種類の薄膜を用い,臨界電流密度(J_c)を強磁場中で定量的に評価した. c軸相関ピンにより,J_cの角度依存性のB//cにピークが現れ,全薄膜でこのJ_cピークが磁場の増加で一旦減少し,高磁場側で再び増加する磁場依存性を示した.柱状欠陥導入は,刃状転位に比べて全磁場領域でJ_cピークを増加させ,特にマッチング磁場(c軸相関ピンの密度と磁束密度が一致する磁場)近傍で大きく上昇した.ナノロッド導入は,柱状欠陥導入と異なり高磁場側のJ_cピークが刃状転位に比べて減少した.以上の異なるc軸相関ピンを導入した薄膜で非常に複雑なJ_cピークの磁場依存性を示すことが分かった. 磁束状態に関連した臨界指数を導出した結果,ランダムピンが支配的であると考えられたが,c軸相関ピンによるJ_cピークの存在から,c軸相関ピンとランダムピンの両方の特性を合わせ持つ,ランダム-ボーズグラス状態と呼ぶべき新たな磁束状態が実現している可能性があることを明らかにした. ランダム-ボーズグラス状態における巨視的なピン力密度が,ランダムピンとc軸相関ピンのそれぞれのピン力密度の二乗平均により与えられるという新たな磁束ピンニングモデルを構築した.このモデルの適用で,非常に複雑なJcピークの磁場依存性をそれぞれのピン力密度の相対的な比とマッチング磁場で理解できた. このモデルにより複雑な「材料」のピンニング状態が理解でき,応用で重要なピン力密度の磁場依存性も予想することができる.特に,相関方向に分布を持つナノロッドの導入は,c軸方向だけでなく,その周りのJ_cも向上させることから,今後の超伝導材料開発において非常に重要である.
|
Research Products
(11 results)