2008 Fiscal Year Annual Research Report
下部マントルにおける鉄の価数不均化反応とその駆動力の解明
Project/Area Number |
08J06774
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浜根 大輔 The University of Tokyo, 物性研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | ポストペロブスカイト / MgSiO3 / FeSiO3 / FeAlO3 / D"層 / 下部マントル / 地震波 / 価数不均化反応 |
Research Abstract |
下部マントルにおける鉄の価数不均化反応の駆動力を解明する上でまず必要なことは、反応が進行し酸化的環境となった状態での下部マントルの物性を正しく把握することにある。すなわち、下部マントルの上層から下層、そして最下層の主要鉱物である珪酸塩ペロブスカイトおよびポストペロブスカイトが酸化的環境で生成した場合、還元的環境で生成したものと比べてどのような物性を示すのかを調べる必要がある。そこで、「地球下部マントルは、価数不均化反応の進行によって還元的な環境ではなく酸化的である」とする、観察・実験事実に注目し、酸化的マントルでペロブスカイト・ポストペロブスカイトの相関系および構造はどうあるべきか、そして、その結果として現在あるD"層はどのように解釈されるべきかに重点を置いた研究を本年度は行った。 現在、D"層においては水平方向のバルク音速の不均質が地震波で観測されている。これまで、この不均質はD"層中の温度分布に沿ったペロブスカイト-ポストペロブスカイト相転移のみで解釈されてきた。 しかしながら、これまでポストペロブスカイト固溶体のバルク音速を実験的に求め、議論した例は少なく、組成不均質がバルク音速に与える影響は明らかでなかった。そこで、ペロブスカイト相およびポストペロブスカイト相の圧縮挙動へのFeO成分(還元的環境)およびFeAlO_3成分(酸化的環境)の効果を、高圧その場環境で実験的に測定した。 FeOおよびFeAlO_3成分の固溶はポストペロブスカイト相の体積弾性率を大きく下げることが明らかとなり、その状態方程式から計算されたバルク音速を比較することで、D"層中でFeOおよびFeAlO_3濃度がバルク音速の不均質に重要な影響を与える要素であることを指摘した。すなわち、酸化的環境はポストペロブスカイト相の圧縮挙動に大きな変化を与えることが、今年度の研究活動で明らかとなった。
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