2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J06796
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
猪野又 葵 The University of Tokyo, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超分子 / 高分子 / ポリロタキサン / シクロデキストリン / ダイナミクス / 粘弾性 / 誘電緩和 / 液晶 |
Research Abstract |
線状高分子ポリエチレングリコール(PEG)が環状分子α-シクロデキストリン(α-CD)の空洞に取り込まれることにより形成される超分子であるポリロタキサン(PR)に対し、その環状分子を液晶性基(メソゲン)で化学修飾した液晶性PRを、当研究室において合成した。液晶性PRは室温で複屈折を示し、液晶相-等方相転移及びガラス転移などの熱的相転移を起こすなど、化学修飾を施さない未修飾PRと大きく異なった性質を有する。本研究では、液晶性PRの構造・相転移挙動・ダイナミクスについて議論するため、(1)環状分子を様々な置換基で修飾したPR誘導体の固体状態での構造解析・熱分析・粘弾性測定・誘電緩和測定などの物性測定とその結果の比較、(2)液晶性PRの液晶ガラス相〜等方相における物性測定、をそれぞれ行った。本研究はポリロタキサンの固体状態での物性に関する初めての研究であり、同時に液晶高分子の新たな可能性を拓くものである。環状分子CDを修飾しないPRでは、CDが水酸基間の水素結合によりパッキングし、結晶性を示す。CDの分解温度以下で結晶構造は保たれ、PRはガラス転移を起こさない。一方でヒドロキシプロピル基、メチル基、アセチル基などを置換基として持つPR誘導体は共通して結晶性が著しく低下し、30〜50℃の温度域でガラス転移を示した。特に結晶性の低い試料においては力学的な緩和が観測された。このモードはPR誘導体における主分散であると考えられるが、PEG単独の場合と比較して高温・低周波域に大きくシフトすることが明らかとなった。また、PR及び各PR誘導体の誘電緩和測定において、PEGの局所モード緩和が観測され、CDの追随により緩和強度が著しく増幅することが明らかとなった。液晶性PRにおいても同様の局所モード緩和が観測され、さらに高温域でもう一つのモードが発現した。液晶相から等方相への転移により活性化エネルギーが著しく減少することから、本モードは側鎖の回転・配向によるものと考察した。
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Research Products
(4 results)