2010 Fiscal Year Annual Research Report
非線形偏微分方程式の解析を利用したハミルトン力学系の研究
Project/Area Number |
08J06856
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
曽我 幸平 早稲田大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Lax-Friedrichs差分法 / ランダムウォーク / 連続極限 |
Research Abstract |
平成22年度の研究では、双曲型保存則方程式のエントロピー解とこれに同値なHamilton-Jacobi方程式の粘性解に対する、Lax-Friedrichs差分近似を確率論的方法で行うことに成功した。Lax-Friedrichs差分法による近似の収束証明は、通常、アプリオリ評価と関数解析の結果を用いて証明される。ここでは、その収束証明を、ランダムウォークの連続極限の結果を用いて行う。差分化された偏微分方程式は、「数値粘性」と呼ばれる拡散効果を持つ。この拡散効果が時間空間非一様ランダムウォークで特徴付け可能なことを示す。さらに、このランダムウォークの確率測度の時間空間連続極限に対する漸近挙動を詳しく調べることで、近似解の収束証明を行う。ここで必要となるランダムウォークは時間空間非一様なものであり、大数の法則や中心極限定理は一般に成り立たない。またここで用いる連続極限のスケールは「双曲型スケール」と呼ばれるものであり、よく知られたDonskerの定理に現れる「拡散型スケール」とは異なる。差分近似の確率論的取扱いにより、Lax-Oleinik半群による解の表示公式に相当する表示公式が差分解に対して得られる他、差分解と真の解との誤差評価や真の解に付随した特性曲線の近似なども可能となる。特にエントロピー解の近似の収束は、従来の方法で標準的なL1ノルムではなく、各点収束となる。これらの結果は、上述の双曲型保存則方程式またはHamilton-Jacobi方程式に対応するHamilton力学系が有するAubry-Mather集合の差分近似を行う上で重要な役割を演じる。
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Research Products
(1 results)