2010 Fiscal Year Annual Research Report
サル大脳皮質層構造における連合記憶の情報伝達:構造MRIに基づく電気生理学的研究
Project/Area Number |
08J06956
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小谷野 賢治 東京大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | MRI / 皮質層構造 / 電気生理 / 連合記憶 / 高次認知機能 / 霊長類 / エルジロイ / 微少電極 |
Research Abstract |
本研究では、視覚性連合記憶に関する下部側頭の大脳皮質層構造の機能分化を調べることで、その情報処理過程を解明することを目的としている。当該年度においては、層構造における記録部位同定のための手法を確立し、その成果を論文として発表した。さらに平行して、この手法を用いて記憶に関連する神経細胞の大脳皮質内における分布を調べた。 下部側頭葉の36野においては皮質層構造のMRI画像化が困難であるため、層構造の同定には組織切片を併用せねばならない。MRI画像と組織切片との対応づけを正確に行うため、昨年度から継続して両者で検出でき位置合わせの基準として用いることのできる鉄沈着標識の開発を行なってきた。当該年度においては、鉄沈着による生体組織傷害性の組織学的評価を行い、実用上問題ないほど小さい(直径230μm程度)ことを確認した。鉄沈着標識の開発全般に関する成果は米国神経学会大会で発表すると共にJournal of Neurophysiology誌へ投稿し、査読を経て受理され、2011年3月号へと掲載された。 上記手法開発と平行し、視覚性対連合記憶課題を遂行中のサルを用いた実験を行った。当該年度においては、昨年度と反対側の大脳半球に関しても神経活動記録を開始し、神経活動の層分布マッピングを行なった。標的部位周辺部に電極先端位置同定時の画像上に写るよう鉄沈着標識を沈着させた後、留置電極を用いMRIにより電極先端を定位しながら神経細胞活動を記録した。神経活動記録時のマニピュレータの目盛りとMRI構造画像から、活動を記録した全ての神経細胞の位置を再構成した。現在、両半球をあわせ計約300個の神経細胞活動の層分布マッピングを完了している。これらの神経細胞の中には視覚性対連合記憶の符号化や想起にかかわる活動を示しているものがあり、連合記憶の情報処理を行う皮質層構造の機能分化が明らかになりつつある。
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Research Products
(14 results)