2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07024
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
中野 智之 独立行政法人国立科学博物館, 地研究部, 特別研究員PD
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Keywords | 生物地理 / 分子系統 / カサガイ / 種分化 / COI / ITS |
Research Abstract |
本年度の研究は、カサガイ類のうちマツバガイ、ヨメガカサ、ベッコウガサを研究の対象とし、それぞれの生物地理を議論する事を目的とした。2種類(肋が強いものと、弱いもの)の殻形態を持つベッコウガサについては、東南アジアの49地点から得られた120個体を解析の対象とし、ミトコンドリアDNAのCOI領域の一部658bpと核DNAのITS1,2の585bpを用いた分子系統解析を行い、軟体部や殻構造、および歯舌の形態の比較を行った。その結果、分子および形態形質では殻形態の2型を区別する根拠はなくベッコウガサの殻形態の変異は種内変異である事が明らかになった。また、ベッコウガサは遺伝的に3つのクレード、(1)本州、四国、九州東岸、九州北岸、(2)九州西岸から沖縄(3)台湾、中国、香港に分けられる事が判明した。このような地理的なパターンはこれまでに判明していたどの貝類とも異なり、ベッコウガサ独自の生物地理パターンが明らかになった。これら3つの地理的なクレードは、おそらく氷河性海水準変動が始まる以前に分化していたと考えられる。 また、南米チリのseepサイトから深海性カサガイの一種Iothia megalodonを記載した。ウノアシ、ヨメガカサを対象とした研究では、いくつかの隠蔽種が存在する事が判明したので、今後、解剖学的・形態学的解析に加えて、模式標本の精査を行い、分類の再検討と新種記載を行う予定である。 本年度は、カサガイ類以外にも、サザエ科に属するスガイ属の種レベルでの系統関係を明らかにするための共同研究を行った。
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