2009 Fiscal Year Annual Research Report
腸管マスト細胞を標的とした新規アレルギー治療戦略の確立
Project/Area Number |
08J07124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
倉島 洋介 The University of Tokyo, 医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | マスト細胞 / 食物アレルギー / 腸管過敏症 / 細胞外核酸受容体 |
Research Abstract |
本研究を開始するにあたり、生体内におけるマスト細胞の活性化を測定する指標が存在しないことから、研究初年度には活性化したマスト細胞を認識する抗体(クローン:5A9)を樹立した。5A9抗体を用いることで、疾患発症における生体内のマスト細胞の動向の解析が可能となった。また5A9抗体はCD63分子を認識していることが明らかとなった。CD63はマスト細胞が脱顆粒することで細胞外に露出する分子であることが示唆されており、食物アレルギーモデルマウスにおいても、アレルギー性の下痢の発症に伴い、CD63陽性(5A9抗体陽性)のマスト細胞が腸管組織内において顕著に増加する事が確かめられた。さらには、腸管過敏症モデルマウスの腸管においても、疾患の発症に伴いCD63陽性のマスト細胞が増加していることが明らかとなった。また、マスト細胞が欠損したマウスでは、食物アレルギーおよび腸管過敏症の発症が抑制もしくは有意に軽減されることも明らかとなり、これら疾患においてマスト細胞の活性化が疾患の増悪化に関与していることが示唆された。しかしながら、食物アレルギーと腸管過敏症の両疾患においても、マスト細胞の活性化が観察されるが、その活性化機構は不明である。食物アレルギーモデルにおいては、自身で樹立した抗IgE抗体を投与しIgE受容体の経路を遮断すると、アレルギー性の下痢の発症を抑制することができ、抗体投与群においてはCD63陽性マスト細胞の減少も観察された。しかしながら腸管過敏症モデルマウスにおいては、抗IgE抗体の投与によっても症状の改善は見られなかった。また、腸管組織内のマスト細胞の活性化率にも差が認められなかった。つまり、食物アレルギーはIgE依存的なマスト細胞の活性化により引き起こされる疾患であるのに対し、腸管過敏症においてはIgE非依存的なマスト細胞活性化機構が存在している事が示唆された。そこで、腸管に存在するマスト細胞を認識する抗体を作製し、腸炎でのマスト細胞の活性化に関与する分子を探索した。樹立した抗体うち、1F11抗体を腸炎誘導過程においてマウスに投与すると、炎症細胞の浸潤ならびに腸炎に伴う体重の減少の緩和が認められた。免疫沈降法や質量分析法により1F11抗体のリガンドは細胞外核酸の受容体であることが明らかとなった。以上の結果より、細胞外核酸によるマスト細胞の活性化が、腸管過敏症の増悪化に関与していることが示唆された。さらに、核酸受容体の遺伝子欠損マウスを入手し、解析を行った結果、腸炎の発症が野生型に比べ軽度であることが明らかとなった。また、核酸受容体を介した刺激によって、マスト細胞からロイコトリエンや炎症性サイトカインが放出されることが明らかとなり、マスト細胞による好中球などの炎症性細胞の腸管組織内への動員機構の一端が明らかとなった。
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Research Products
(1 results)