2008 Fiscal Year Annual Research Report
最適輸送問題からのリーマン計量の変形理論-曲面上のリッチ流の再解釈-
Project/Area Number |
08J07130
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高津 飛鳥 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 最適輸送問題 / 熱方程式 / リッチ曲率の幾何 |
Research Abstract |
今年度の私の研究内容はGauss測度族のWasserstein構造の解析である。ここでWasserstein構造とは最適輸送問題から定まる二次モーメントが有限な確率測度空間上の距離構造であり、Gauss測度族とは熱方程式の基本解を含む確率測度族である。このことと、研究課題であるリッチ流には非常に深い関連がある。近年G.Perelmanはリッチ流などを用いてPoincare予想を解決した。その証明中で拡散の程度を表すエントロピーが重要な役割を果たし、相対エントロピーのWasserstein幾何における勾配流は熱方程式を導く。またリッチ流は熱方程式に類似している。 一方、幾何学的量を微分構造を仮定せずに定式化する一つの方法として、リーマン多様体上の熱方程式の解の減衰度とリッチ曲率の下限の関連性を鑑みて、測度距離空間において相対エントロピーの凸性をリッチ曲率の下限に相当する条件とみなす手法がある。 このようにリッチ曲率とWasserstein空間の幾何は密接に関わり合っていて、さらにWasserstein空間の中でのGauss測度族の重要性が伺える。実際Gauss測度族はWasserstein空間の中で全測地的なので、Gauss測度族にその構造を制限することは自然である。Gauss測度族の多様体あるいはその距離空間としての完備化された空間のハウスドルフ次元は有限なので、無限次元であるがために抽象的にしか分からなかったWasserstein空間の幾何学的量を具体的に書き下せる。 そこで私はGauss測度族のWasserstein幾何としてリーマン多様体としての性質、主にリーマン計量の具体的表示とその断面曲率、およびアレキサンドロフ空間としての性質、滑層分割と接錐の構造を描写することに成功した。
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Research Products
(1 results)