2009 Fiscal Year Annual Research Report
最適輸送問題からのリーマン計量の変形理論-曲面上のリッチ流の再解釈-
Project/Area Number |
08J07130
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高津 飛鳥 Tohoku University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 最適輸送理論 / エントロピー / 多孔質媒体流 / 測度距離空間 |
Research Abstract |
私の研究目的は,最適輸送理論を用いてユークリッド空間やリーマン多様体上の既知の幾何学・解析学および確率論を,測度距離空間というより広い枠組みで捉え直すことである.最適輸送理論とは1781年にMongeが提唱し,1948年にKantorovichが大きな進展がもたらした理論であり,確率測度空間上にWasserstein距離という距離構造を導く. 昨年度は最も基礎となるエントロピー,Boltzmannエントロピーの最大化族であるGauss測度族の最適輸送理論に関する幾何構造の解析をした.今年度は,Boltzmannエントロピーの一助変数族とみなせるTsallisエントロピーとその最大化族であるq-Gauss測度族の考察をした.ここで,qは1の近傍で定義された助変数であり,qが1のとき通常のGauss測度と一致する.私はWasserstein距離に関してこのq-Gauss測度族がqの値に関わらずGauss測度族と等長的であることを示した.この事実は,無限次元空間であるWasserstein空間の葉層構造を考えるときに足掛かりになりうる.また,Boltzmannエントロピーが熱流と関連深いことと同様に,Tsallisエントロピーは沢山の穴が空いた物質の中を液体が流れるときの様子を記述する方程式である多孔質媒体流と関連が深い.熱方程式と違って多孔質媒体流は非線形であるために,一般解を求めることは難しい.しかし私は初期値をq-Gauss測度に制限することで,多孔質媒体流の解表示に成功した.現在はこれを一般の初期値に拡張しようと試みている.
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Research Products
(3 results)