2008 Fiscal Year Annual Research Report
覚せい剤による依存形成に関与する新規機能分子の同定と生理機能の解明
Project/Area Number |
08J07152
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
丹羽 美苗 Nagoya University, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | シヤチshati / 覚せい剤メタンフェタミン / ドパミン / 薬物依存 / 薬物依存形成機構 / 行動薬理学 / 神経化学 / 分子生物学 |
Research Abstract |
覚せい剤や麻薬による薬物依存は大きな社会問題であるが、治療法がほとんど確立されていないのが現状である。依存形成の鍵となる機能分子を同定するために、メタンフェタミン(METH)を連続投与した時の運動量増加作用に過感受性を示したマウス脳の側坐核から取り出したmRNAを用いて、cDNAサブストラクション法によって、新規機能分子'shati'を同定した。Shatiがどのように薬物依存に関与しているかを、行動実験的、神経化学的および分子生物学的手法で検証した。 マウスにshati-アンチセンス(shati-AS)を脳室内に注入すると、shati-スクランブルオリゴヌクレオチド(shati-SC)を注入されたマウスと比べて、shatiの発現レベルが有意に抑制された。METHをマウスに皮下投与すると、自発運動量が亢進し、5日間連続投与することで、METHに対する反応性(運動量)が増加し、逆耐性が形成された。また、METHの連続投与によって場所嗜好性が形成された。shati-AS群では、SC群および人工脳脊髄液(CSF)群と比較して、自発運動量亢進、逆耐性、および場所嗜好性の形成が有意に増強された。これらの結果から,shatiはMETH誘発過感受性および報酬効果に対して、抑制的に働いていることが明らかとなった。Shati-AS群では、SC群およびCSF群と比較して、METH連続投与によって引き起こされる側坐核での細胞外ドパミン(DA)量の増加およびシナプトソーム内へのDA再取り込み能低下を有意に増強した。METHはDAトランスポーターに作用して、DAの再取り込みを阻害する一方で、シナプト間隙のDA遊離を促進する。その結果、自発運動量亢進および場所嗜好性の形成が引き起こされると考えられる。本研究の結果より、shatiは、DA再取り込みを促進し、DA遊離を抑制することにより、シナプト間隙のDA量を減少させ、METH依存形成を抑制していることが示唆される。 今後、shatiの依存形成メカニズムへの関与を詳細に解明することが、薬物依存形成機構の解明と治療薬の開発に繋がると考えられる。
|