Research Abstract |
従来の使い捨て遠心血液ポンプでは,血液吐出用の羽根車(インペラ)を接触式軸受で支持することによる,低耐久性,血球破壊,血栓形成が問題になっている.そこで,本研究では,インペラを磁気軸受によって浮上する,磁気浮上遠心血液ポンプを提案している.平成20年度は,(1)インペラの形状が血球破壊に及ぼす影響,(2)動物実験に向けたポンプ性能の評価と向上,および(3)動物実験を行った. (1)インペラ形状が血球に及ぼす影響では,血液吐出用のインペラが羽を有するベーン型インペラと,羽根を有さないコーン型インペラを設計・試作し,血球破壊量の比較を行った.その結果,ベーン型インペラの方が血球破壊量が少ないことが明らかとなった.なお,ベーン型インペラは,血球破壊量が臨床使用されている血液ポンプの半分程度であり,磁気浮上の有効性を確認している. (2)動物実験に向けたポンプ性能の評価と向上では,実用レベルの流量5L/min,揚程800mmHgの性能が達成できるように,インペラにモータトルクを伝達する機構の改良と試作を行った.その結果,5L/min,810mmHgの性能を達成している.また,救急車内の振動を模擬した基盤加振・衝撃試験を実施し,ポンプの安定動作を確認した.これらの実験を通し,試作ポンプの高信頼性を実証している. (3)動物実験では,ポンプ内の血栓特性を評価するため,人間の成人に近い体重60kg程度の仔牛に試作血液ポンプを接続した.8頭実施したところ,1〜2週間の生存に成功し,実験後にポンプヘッドを分解・観察したところ,血栓形成は一切見られず,従来の血液ポンプで問題となっている血栓形成に関しても,解決の兆しが見られた.(1)〜(3)の研究成果を通し,提案する血液ポンプが従来の血液ポンプよりも血球破壊,血栓形成の点で優れている可能性が示唆された.また,高信頼性を有することが実証された.
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