2010 Fiscal Year Annual Research Report
言語的相互作用の複雑化と多様化機構の理解:構成的モデルによるアプローチ
Project/Area Number |
08J07177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹原 和俊 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 音声コミュニケーション / 複雑ネットワーク / 情報理論 / 構成論的モデル |
Research Abstract |
本研究の目的は、生物の音声コシュニケーションを分析し、生物学的妥当性を滿たすコミュニケーションのモデルを構成することで、言語的相互作用が複雑化・多様化するメカニズムを明らかにすることである。平成22年度は、UCLAのTaylor教授のもとで、California Thrasherの音声コミュニケーション信号(歌)、を複雑ネットワークを用いて解析し、講造設計原理を探求した。その結果、California Thrasherの歌ネットワークにおいて、シラブルタイプの遷移的関係性がスモールワールド性を持つことが示された。 また、歌ネットワークには決定論的な遷移と非決定論的な遷移が共存することが明らかになった.さらに、歌ネットワークのダイナミクスは一次マルコフ程度の複雑性を持つことが示された。平成23年度は、以上の発見について国内外の学会やワークショップで発表をおこなった。さらに、同研究成果について論文を執筆して投稿し、一般読者向けの論考も執筆した。前者は現在査読中で、後者は思想地図βに掲載された。鳥類が音声コミュニケーションに用いる歌の構造特徴は、新規性(予測可能性)と親近性(予測不可能性)を同時に持つ信号を生み出す文伝的制約に関係していると考えられ、音声コミュニケーション信号の進化の1つの可能性が示唆された。今年度の後半は、音声学習のモデル生物であるジュウシマツを用いて、発達過程において歌構造がどのように形作られるのかを検討した。その結果、音韻レベルの発達と文法レベルの発達には相関があり.またリズム構造は分岐を伴いながら発達することが明らかになった。さらに、発達の時間発展は非線形的で、発達初期には急進的に、後期は徐々に完成形へと漸近ことが示された。これは、言語的相互作用の進化に関する大きな手がかりとなる。以上の結果について、今年度末までに論文にまとめ投稿する準備を進めている。
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Research Products
(9 results)