2008 Fiscal Year Annual Research Report
言語的相互作用の複雑化と多様化機構の理解:構成的モデルによるアプローチ
Project/Area Number |
08J07177
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹原 和俊 The University of Tokyo, 生物言語研究チーム, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分節化能力 / 音声発達 / 言語統計と言語モデル / 構成論的モデル / エージェント |
Research Abstract |
本年度は、生物学的妥当性を満たす形で分節化能力をモデル化するために、2つの基礎研究をおこなった。まず、分節化能力に関する幼児の言語発達や鳴禽類の音声発達についての文献調査をおこない、これまでに生物学的に解明されていること・いないことを整理して、考察をおこなった。その成果の一部を、ベビーサイエンスのコメント論文としてまとめた。 次に、理化学研究所生物言語研究チームにおいて、脳波や光トポグラフィーを使った実験の被験者となったり、飼育環境で鳴禽類の音声発達を観察したりして、実験現場において分節化現象に関するデータを収集した。特に、鳴禽類の音声発達では、音素、チャンク、文法、それぞれの階層に特徴的な分節化現象が生じることが知られているため、24時間の連続記録が可能な録音装置を用いて、ジュウシマツという鳴禽類の音声発達を記録した。この大規模な音声発達データを解析したところ、音素の多様化過程には、音素の持続時間とピッチ周波数が大きく関係し、分節化現象以前のイベントとして重要であることがわかった。さらに、音素をタイプごとにシンボル化して、音素系列を言語統計と言語モデルを用いて解析を行った。その結果、ジュウシマツの音素系列は、発達にともないシャノンエントロピーが単調減少し、生後80日ぐらいで音素系列が構造化することを発見した。この目的のために、EUREKAという言語統計と言語モデルを用いて系列データを解析するシステムを構成した。EUREKAの動作原理をまとめた論文は、Data Mining and Knowledge Discovery誌に掲載される。 以上の成果に基づいて、来年度、分節化能力をもつエージェントを設計し、構成論的な立場からモデル研究をおこなう。
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Research Products
(6 results)