2008 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦期アメリカ文学における「核の想像力」の詩学-カート・ヴォネガットを中心に-
Project/Area Number |
08J07228
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 文香 Seikei University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | アメリカ / 核文学 / 冷戦期文化 / 原子爆弾 |
Research Abstract |
1、慶應義塾大学大学院文学研究科へ提出された博士号学位請求論文Surviving the World's End:Hiroshima,History,and Testimony in Kurt Vonnegut's Nuclear Fiction(英文:平成21年2月提出)は、カート・ヴォネガットの作品における核兵器の表象を核批評や冷戦期文化批評に基づいて分析することにより、冷戦期アメリカ文学のなかに歴史的事件としての原爆投下を再定位しようとする試みである。冷戦期アメリカにおいて核は未来に予測される核戦争の黙示録的イメージとして描かれることが多かったが、ヴォネガット文学は核兵器使用を現実にすでに起こった事件あるいはその証言として歴吏記述的メタフィクションのなかに書き込んでいく点に特異性がある。こうした視点はアメリカを核兵器使用国として再定義する一方、核を「まだ起こっていない事件」としていた1980年代の核批評を批判的に乗り越える契機を示している、と結論づけた。この研究に関わる特記事項は以下の通り。 (1)平成20年5月資料調査:広島市立図書館および平和記念資料館 (2)平成20年9月資料調査:米国インディアナ大学ブルーミントン校(ヴォネガット未発表草稿群)およびニューヨーク公立図書館、ラトガーズ大学図書館、プリンストン大学図書館 (3)受入先・成蹊大学大学院文学研究科における研究発表 2.博士論文の一章を成す英語論文が米国インフォベース社の刊行する作家研究シリーズ最新刊Bloom's Modern Critical Views:Kurt Vonnegut-New Edition(Harold Bloom編)に採用され、平成21年1月共著として刊行された。なお同書は電子アーカイヴにも収録される予定。 3.次年度以降の研究計画に掲げた「国際学会での研究発表」を実現すべく準備を進めた。当該年度中に提出した研究発表プロポーザルが採用され、平成21年5月全米文学協会2009年年次大会(ボストン)にて口頭発表を行なう予定になっている。口頭発表の本文はヴォネガット協会を通じてインターネット上でも発表される予定。
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Research Products
(3 results)