2009 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦期アメリカ文学における「核の想像力」の詩学-カート・ヴォネガットを中心に-
Project/Area Number |
08J07228
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
永野 文香 Seikei University, 文学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | アメリカ / 核文学 / 冷戦期文化 / 原子爆弾 |
Research Abstract |
1.前年度慶應義塾大学大学院文学研究科へ提出された博士号学位請求論文Surviving the World's End : Hiroshima, History, and Testimony in Kurt Vonnegut's Nuclear Fiction、および平成21年度中に行われた口頭試問によって平成22年2月、慶應義塾大学より博士号学位を授与された。本研究は、カート・ヴォネガットの作品における核兵器の表象を核批評や冷戦期文化批評に基づいて分析することにより、冷戦期アメリカ文学のなかに歴史的事件としての原爆投下を再定位しようとする試みである。冷戦期アメリカにおいて核は未来に予測される核戦争の黙示録的イメージとして描かれることが多かったが、ヴォネガット文学は核兵器使用を現実にすでに起こった事件あるいはその証言として歴史記述的メタフィクションのなかに書き込んでいく点に特異性がある。こうした視点はアメリカを核兵器使用国として再定義する一方、核を「まだ起こっていない事件」としていた1980年代の核批評を批判的に乗り越える契機を示していると結論づけたものである。 2.当初の研究計画通り、平成21年5月米国American Literature Association 2009年年次大会(於ボストン)にて口頭発表(別紙7.研究発表1)をおこない、これまでの研究成果を世に問うと同時に、国際的なネットワークを築くことができた。発表の本文はKurt Vonnegut Societyを通じてインターネット上でも近々発表される予定。また、この渡米に際し、以前留学していたラトガーズ大学図書館にて資料調査をおこなった。 3.当該年度中の研究を受けて、平成22年度には以下の研究発表・共著書刊行が内定している。 ・当該研究をより広いアメリカ文学史的文脈へ位置づける試みとして、日本アメリカ文学会全国大会におけるシンポジウム(講師5名、コメンテーター1名)へ講師として参加することが内定している。 ・数名の研究者とともに共著を準備中である。本邦初訳となる資料の選定をはじめ、全体の構成・執筆に企画段階から参加(『現代作家ガイドカート・ヴォネガット(仮)』彩流社、平成22年度中刊行予定)。
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Research Products
(1 results)