2008 Fiscal Year Annual Research Report
極低温凝縮原子気体における量子乱流現象の理論的研究
Project/Area Number |
08J07229
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小林 未知数 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 量子渦 / 量子乱流 / 量子流体 / 非可換量子渦 / ボース・アインシュタイン凝縮 |
Research Abstract |
私の研究目的は、極低温凝縮原子気体に代表される量子流体において、その乱流状態を理論的に解明し、量子流体力学の基礎を構築することである。量子乱流は舞台となる量子流体中の量子渦をその構成要素とするが、今回私は非可換量子渦と呼ばれる新奇な量子渦の理論的研究を行った。非可換量子渦とは量子渦が持っている幾何学的量子数の代数が非可換となるような量子渦であり、スピン自由度のあるボース・アインシュタイン凝縮体において実現される。今まで研究されてきた(可換)量子渦は衝突の際に再結合と呼ばれる現象を起こし、乱流中では大きなスケールの渦から小さなスケールの渦への自己相似的カスケードが引き起こされ、これが量子乱流の統計性を決めると考えられてきた。今回、私は非可換量子渦の衝突現象を数値的および代数的に解析し、可換量子渦と異なって再結合を起こさず、グルーオンラングと呼ばれる新しい渦構造が生まれ、衝突する渦をつなぎ止めることを発見した。この結果は非可換量子渦によって構成された量子乱流が、従来の量子乱流と異なって自己相似的カスケードを持たず、大規模な量子渦のネットワーク構造を生み出して乱流の統計性を大きく変えるであろうことを意味する。非可換量子渦の乱流(非可換量子乱流)をさらに詳しく調べることによって、量子渦と乱流の統計性との関係がより明らかになるであろう。 また、量子渦の幾何学的特徴は、数学において位相幾何学、特にホモトピーの分野における理論を用いて解析することができるが、非可換量子渦は非可換なホモトピー群の理論が実際の物理系に適用される数少ない例であり、数学的側面においても非常に興味深い。また非可換量子渦と同様な幾何学的特徴を持った構造が液晶や宇宙紐などでも考えられ、私の研究はこれらの研究分野にも適用することができ、その発展に貢献できるであろう。
|
Research Products
(11 results)
-
-
-
[Presentation] 非可換量子渦2009
Author(s)
小林未知数, 川口由紀, 新田宗土, 上田正仁
Organizer
日本物理学会第64回年次大会
Place of Presentation
立教大学
Year and Date
2009-03-28
-
-
-
-
-
-
-
-