2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07231
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲垣 哲也 Nagoya University, 大学院・生命農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 近赤外分光法 / 木材 / 非破壊計測 / 考古計測学 |
Research Abstract |
本研究の目的は木材の劣化を分光学的に詳細に把握することである。本年度は、熱処理広葉樹材(ブナ)を経年劣化木材の代替品とみなして、その近赤外スペクトルおよびいろいろな物性値を測定した。近赤外スペクトルと物性値の相互作用(とくにに含水率・密度・構成成分比と圧縮ヤング率との相互作用)を観察し、熱処理による針葉樹材の劣化をケモメトリクス観点から詳細に観察した。多変量回帰分析の一つであるPLS回帰分析によって近赤外スペクトルから熱処理木材の圧縮ヤング率が非破壊で予測できることが示された。さらにこの研究では、回帰ベクトル、スコア、ローディングプロット等の統計的情報から木材の劣化機構を解明することを試みた。ローディングプロットから、熱処理材の圧縮ヤング率の推定に大きく関与しているのは1.多糖類の分解の程度と2.リグノセルロースの結晶性であることがわかった。また、それぞれの介在変数の圧縮ヤング率説明分散の値から、ブナ材の圧縮ヤング率が熱処理時間とともに一旦増加したのち減少に転じたのは、リグノセルロースの結晶性の変化が多糖類の分解の程度の変化と同様に大きかったことに起因することが推定された。上記の研究成果を取りまとめて、Applied spectroscopy誌に投稿した。 本年度の研究によって、近赤外分光法と多変量解析を組み合わせることによって、劣化木材の機械的性質が非破壊かつ高い精度で予測可能であることが示された。また、その予測機構が合理的(従来の研究とも矛盾しない)であるため、近赤外分光法を用いた重要文化財の材質評価法の確立にとって大きな研究成果であると言える。また熱処理に伴う木材の機械的性質の変化に関して、分光法でしか得ることのできない有益な情報を得ることができた。
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Research Products
(7 results)