2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07263
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
手塚 記庸 Kyoto University, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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Keywords | カーボンナノチューブ / フラーレン / ポルフィリン / 光電変換素子 / 有機太陽電池 / 光電気化学 / 泳動電着 / ナノ炭素材料 |
Research Abstract |
申請者はこれまでの研究から、単層カーボンナノチューブ(SWNT)とフラーレン(C60,C70,C84)のo-ジクロロベンゼン混合溶液に対し、貧溶媒であるアセトニトリルを添加すると、SWNTの側壁にフラーレン分子が密に吸着した複合体が形成することを見出している。平成21年度は、これらの複合体について、電子顕微鏡観察による構造評価、時間分解マイクロ波伝導度測定による電子移動度の評価を行った。さらに各複合体を半導体電極上に泳動電着した光電変換素子を作成し、光電気化学特性を評価した。その結果、C60-SWNTおよびC70-SWNT複合体において、SWNTとの複合化により光電流発生効率が大幅に向上することが明らかとなった。これは、SWNT外壁に吸着したフラーレン分子が電子の効率的な輸送経路として働き、膜中における電子移動度が向上したためと考えられる。一方、C84-SWNT複合体では、SWNTとの複合化による光電変換特性の向上は認められず、光電流発生効率は他の複合体と比較し小さい値となった。これは、C84の還元電位がC60やC70に比べて正側にシフトしており、半導体電極への電子注入が阻害されているためと考えられる。以上のように、SWNTとフラーレンが融合した新規ナノ炭素複合材料の基礎的物性を解明するとともに、光電変換素子への適用に成功した。SWNTとフラーレンの複合化が光電変換特性を向上させる上で有効な手段となることを示した本研究結果は、高性能有機太陽電池の開発に向け有用な知見となると考えられる。この他、ポルフィリン間をフラン、あるいはチオフェンで架橋した新規共役ポリマーを合成し、有機太陽電池への適用を検討した。また、良-貧混合溶媒系中にて生成するC70クラスターに関し、その自己組織化挙動と光電変換特性を明らかにし、クラスター形状と光電変換特性の相関について考察した。
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