2009 Fiscal Year Annual Research Report
下層群落の成育が人工林のリターに及ぼす影響:モデル構築-将来予測-現状との比較
Project/Area Number |
08J07278
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
宮沢 良行 Kyushu University, 大学院・農学研究院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 葉の現存量 / 下層群落 / リター / 生理生態特性 / 人工林 / 耐陰性 / 常緑広葉樹 / 落葉広葉樹 |
Research Abstract |
本年度は当該研究の目的である下層植生からのリターの供給の定量的な解明と、森林全体からのリター量におよぼす影響」の解明に取り組んだ。本研究では以下の知見が得られた 1.常緑樹と比べ、落葉樹ではリターの供給量が大きくなった。リター量は葉の寿命と現存量(葉面積指数、LAI)、葉の形態特性(SLA、葉面積/葉重)で表されるが(=LAI/葉寿命/SLA、式[1])、葉寿命・SLAは葉寿命とともに増加することが背景にあった。この結果は、地球上で調べられているメタ解析とも一致するため(Reich et al.1997,PNAS)、葉寿命とリター量の負の相関は普く観察される現象だと思われる。 2.構成個体サイズの大きい下層群落ほど、リター量が大きくなった。式[1]のうち、葉寿命・SLAは個体サイズと関係なく種内で一定だったが、LAIは個体サイズとともに増大したためである。 3.下層群落のリター量には構成個体の樹種・サイズによって大きな変動が見られたものの、その林分全体に占める割合は1-5%であり、その挙動が森林全体におよぼす影響は限定的だと考えられる。 このように、現在必要性が提唱されている間伐などの森林管理にともなう下層群落の生育は、下層植生のリター量に対して定性的・定量的な変化をもたらすと考えられる。 一方、下層木の葉寿命の種間差は、植物の生長を強く規定していることが明らかになった(Miyazawa and Otsuki2010)。落葉樹などの葉寿命が短い種はSLAの高い葉を作ることで、同サイズの葉寿命の長い種よりも葉面積を大きく維持している。その結果、落葉樹は林床での光獲得量および光合成生産量で常緑樹を圧倒していた。しかも、個葉レベルの生理特性の極端な変化があった場合でも、この種間差が変化することはなかった。 落葉樹の高い成長速度、すなわち生産が、落葉樹で構成される下層植生の高いリター生産の一因だと考えられる。
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Research Products
(4 results)