Research Abstract |
申請した研究は,地球温暖化が森林蒸発散量,二酸化炭素固定量に与える影響を,モデルを用いて,日本全国で予測するものである.モデルを日本全国に適用するためには,数多くの流域で,モデルの精度を確かめ,モデルの一般性を高める必要があるが,水文データの公開は進んでおらず,容易には,数多くの流域のデータを入手できない.申請者は,文献を踏査することにより,日本全国に設置された山地小流域13流域と多目的ダム32流域の観測データが利用できることを発見した.これらをまとめることで,水文データベースを構築した. 本研究のモデルは,いくつかのサブモデルから構成されている.サブモデルの推定粘度を確かめることは,モデル全体の推定精度を知る上で重要な情報となる.そこで,流出サブモデルについて,精度の確認を,申請者が構築した水文データベースを用いて確認した.その結果,サブモデルは,その流域の水循環を良好に再現できることが明らかとなった.また,サブモデルのパラメータの一部は地質によって分類されることがわかった.これにより,流出サブモデルのパラメータの決定には,地質のデータを用いればよいことがわかった. 日本において,山岳地帯は,地球温暖化の影響を最も受けやすい地域の一つであるといわれている.このことから,申請者は,他の地域に先駆け,富山県黒部ダム集水域で森林蒸発散量の将来予測を行った.その結果,この地域の森林蒸発散量は,現在と将来で大きく変動しないことが明らかとなった.この結果は,Hydrological Processes誌で発表した.
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