2008 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質分解酵素感受性異常型プリオン蛋白質の生物学的・生化学的特性解析
Project/Area Number |
08J07303
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中満 智史 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | プリオン / 細胞生物学 / 細胞密度 |
Research Abstract |
プリオンの性状を最も反映すると考えられる異常型プリオン蛋白質フラクションは、蛋白質分解酵素感受性異常型プリオン蛋白質(PrP^<Sc>-sen)であると考えられる。本研究では、プリオン持続感染培養細胞からの純度の高いPrP^<Sc>-senフラクションの回収を目標とした。 既存法に改良を加えた検出系で分析したところ、当初予想していたよりも、感染培養細胞にはPrP^<Sc>-sen画分は多くはないことが示唆された。そのため、培養細胞中での異常型プリオン蛋白質(Prp^<Sc>)のキネティクスを詳細に解析し、最もPrP^<Sc>が効率的に生成される条件を検討した。実験には当研究室で樹立した、プリオン感染に対し様々な感受性を示すマウス神経芽腫細胞(N2a)サブクローン群を用いた。細胞を継代した後、24時間から168時間において24時間ごとに細胞を回収し、PrP^<Sc>量を解析した。その結果、PrP^<Sc>量は継代後48時間以内に一過性の減少を示し、その後回復し、120時間以降でプラトーに達するという変動を示した。さらに、その変動は継代後の時間ではなく、細胞密度に関連することを明らかにした。この結果は、感染細胞と非感染細胞のコカルチャや、間接蛍光抗体法によっても裏付けられた。感染細胞内のPrP^<Sc>量変動に言及した報告はあったが、それを細胞密度というパラメータに関連付けたのは初である。一方、PrP^<Sc>の基質である正常型プリオン蛋白質の発現は、細胞密度に影響されなかったため、この変動は細胞内にPrP^<Sc>増殖に有利な微小環境が生じたことによると考えられる。今後、キネティクスのより詳細な解析および、PrP^<Sc>の多く含まれるフラクションからのPrP^<Sc>-senの分離を平行して進める予定である。
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