2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07308
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 克尚 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本近代文学 / 言説分析 / 大江健三郎 |
Research Abstract |
平成20年度は、「動物とファシズム-大江健三郎「奇妙な仕事」論」(『日本近代文学』、第79集、2008年11月)と「書評原宏之著『言語態分析-コミュニケーショシ的思考の転換』」(『言語態』、第8号、2008年7月)の二本の論文を公刊した。 前者は、従来の大江の初期小説研究に欠如していた動物の主題への観点を導入し、サルトルに代表される実存主義=ヒューマニズムの側面とは別に、ガスカールの動物小説から継承した人間性=主体性への疑念という側面が大江の初期小説に孕まれていたことを明らかにしたものである。この観点から出発すれば、「飼育」、「人間の羊」などの作品でも新たな読みを提示できると考えられ、現在学会発表、投稿論文を準備中である。 後者は、『言語態』編集部からの依頼による書評である。原宏之氏は、東京大学言語清報科学専攻の出身であり、このたびその研究成果を一冊にまとめ、博士論文として提出された。本書評を執筆する過程で、フーコー『知の考古学』における言説分析の方法に関する知見を深めることができた。この知見を基盤としつつ、現在、大江の小説と同時代の諸言説が結び合う関係性を記述する可能性を探っている。この方向でも、次年度何らかの成果を発表したいと考えている。
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Research Products
(2 results)