2008 Fiscal Year Annual Research Report
森林管理の正統性変容過程における「協治」の可能性-インドネシア東カリマンタン州西クタイ県コミュニティ林業事業を事例として-
Project/Area Number |
08J07323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
棚橋 雄平 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | インドネシア / 住民参加型森林管理 / コミュニティ林業 / 自然資源管理 / 慣習 / 正統性 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画通りインドネシアにおける長期間の現地調査を行った。この現地調査の目的は、調査対象地である西クタイ県ニュアタン郡スンブアン村・ジョンタイ村の自然資源利用のあり方やその背景となる価値観を明らかにすることである。そのため、本年度は6月10日から2月25日までインドネシアに滞在し、対象村での聞き取り調査や西クタイ県政府の担当者へのインタビュー、文献収集・分析を行った。 対象村での聞き取り調査では、血縁関係を中心とした農地・林地の利用や農作業・宗教儀式における相互扶助などが未だに色濃く残っており、現地における資源利用の価値観、正統性に関する意識の根幹をなしていることが確認された。しかし現在、焼畑による米作から農業的ゴム栽培へと生業の転換が起きており、これによって土地利用・資源利用のあり方が大きく変化しつつある。例えば、今までは田植えや稲刈りの作業は等価での労働交換が主流であったが、金銭を媒介とした賃労働が増加しつつある。こうした変化を今後も注視していく必要がある。 また、インドネシア滞在中は中央政府の森林政策に関する文献の収集・分析も行った。現在、国有林内・周辺に居住する地域住民の慣習的利用の権利を認めるような形での森林管理の枠組みが整備されつつある。つまり、「慣習林」「村落林」などが法的に認められるようになったのである。しかしまだその詳細な実施要項は出されておらず、どこまで有効なものとなりうるか今後も検証が必要である。また、研究対象地で行われているコミュニティ林業事業は、中央林業省の管轄外である国有林外に残存する森林管理を主眼として行うということが明確になり、事業の進展に向けて準備が進みつつある。 インドネシアの森林政策を扱った研究は多くあるが、国有林外のコミュニティ林業は西クタイ県独自の政策であり、これを地域住民の森林管理のあり方と併せて研究を行う意義は大きい。
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Research Products
(1 results)