2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07333
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 智和 Kyoto University, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | D-セリンデヒドラターゼ / D-セリン / ピリドキサール5'リン酸 / 亜鉛 / デヒドラターゼ / セリン |
Research Abstract |
真核生物型D-セリンデヒドラターゼ(以後よりDsdSC)は、ビタミンB6の補酵素型であるピリドキサール5'リン酸とZn2+に依存して、D-セリンをピルビン酸とアンモニアに分解する。本酵素はZn2+に依存する唯一のPLP酵素であり、その機能を詳細に解析した。その結果DsdSCからの亜鉛の除去が酵素に微細な構造変化を引き起こすことが示唆された。また、1H-NMRを用い、D-セリンのCαプロトンの引き抜きと、その後に起こる予想されるヒドロキシル基脱離の両速度を分別測定した。Cαプロトンの引き抜き速度が、ヒドロキシル基の脱離速度とほぼ同等であること、Zn2+の除去により両活性がほぼ完全に失われることなどが明らかとなった。以上の結果等より、Zn2+はCα位のプロトンの引き抜きの後の、脱離基の脱離能を高める為に必要な構造の維持に寄与し、Cβ位のOH基とCαプロトンの脱離は協奏しているものと予想された。 また、DsdSCのLys57がPLPとシッフ塩基を形成し、基質のCαプロトンの引き抜きに関与することが明らかとなった。さらに、Cys400のアラニン置換体がD-セリンとD-トレオニン等のヒドロキシル基を有する基質に対する活性を完全に失う一方、β-クロロ-D-アラニンに対する活性を維持することを見いだした。この変異体はZn2+除去酵素と同様の性質を示すことから、同残基がZn2+の結合残基である可能性が考えられた。 また、われわれは以前、DsdSCを用いた簡便なD-セリン酵素定量法を開発し、同方法がヒト尿中D-セリン定量に適用可能であることを示した。今年度は、同方法を改良し、ピルビン酸オキシダーゼ、Amplex-Red、ペルオキシダーゼのカップリングアッセイにより、前述の酵素定量法の感度を既存法と比べ、その感度を約10倍改善する事に成功し、1μMのD-セリンを定量可能であることを示した。また、今回の改良アッセイ法を牛血清に適用し、血清中のD-セリンが良好に測定可能であることを確認した。
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Research Products
(2 results)