2009 Fiscal Year Annual Research Report
外傷後ストレス障害に対する心理療法の神経生物学的作用機序の検討
Project/Area Number |
08J07434
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
袴田 優子 National Center of Neurology and Psychiatry, 精神保健研究所 精神成人保健部, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 外傷後ストレス障害(PTSD) / 腹内側前頭前皮質 / 陽電子断画像(PET) / 注意バイアス / 注意バイアス緩和治療(ABMT) / 不安障害 |
Research Abstract |
本年度は,アメリカ合衆国の国立精神衛生研究所にて,研究課題の遂行上必要な脳神経画像の基礎技術を習得するとともに,外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder; PTSD)を含む不安障害に対する新規の心理的介入法の効果についてメタ分析的研究を行った。そして本研究において,注意バイアス緩和治療法(Attention Bias Modification Treatment; ABMT)の不安軽減に関する有効性を明らかにした(In submission)。PrSDには持続的暴露法を中心とした認知行動療法の有効性が明らかにされているが,これは解離症状を強く表す患者,また子どもなどトラウマ記憶に言語的にアクセスすることが困難な患者に適用することの難しさが指摘されている。このため,本ABMTはこうした従来の治療の限界点を補うものとして期待される。 一方,PTSD治療における標的となる脳神経基盤については,陽電子断層画像(PET)を用いて,PTSDに対するリスクファクターとなることが知られる不安志向性気質に注目し,この神経生物学的な基盤について検討を行った。この結果,特にリスクファクターとなる人格行動特性を強く有する女性において腹内側前頭前皮質の糖代謝活動が有意に低いことが示された(Psychiatry Research: Neuroimaging誌,2009年9月号)。この領域は,情動制御に加えて,感覚情報について自己に関連づける処理を行い自伝的記憶に統合するという機能に関わっていることが知られている。ABMTを含むPTSDへの心理療法は,この領域に直接あるいは間接的に関与することでその症状の軽減に役立っている可能性が示唆される。
|
Research Products
(2 results)