2009 Fiscal Year Annual Research Report
フィリピン共和国CBFMにおけるドナーの支援プロジェクトの比較分析
Project/Area Number |
08J07509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
椙本 歩美 The University of Tokyo, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 森林資源管理 / 森林政策 / 分権化 / フィリピン / 政策実施過程 / 合意形成 / 現場森林官 / Community-based Forest Management |
Research Abstract |
平成21年度の研究は、国内での文献調査や学会発表を通した研究の理論化と、国外での現地調査によるデータ収集を行った。 国内の研究成果は、第一に所属機関のゼミや外部の研究会などに出席して、諸理論の習得や研究課題の分析を進めたことである。第二に、3度の学会発表を通して分析視点の改善と明確化が可能になった。『国際開発学会第10回春季大会』と『第39回環境社会学会セミナー』では、交付申請書に記載した分析枠組みである、協働ガバナンスの地域固有な要因について発表した。発表に対するコメントから、より深いフィリピンの社会文化的背景を分析していくことと、問題設定の明確化が必要だと分かった。そこで『第14回フィリピン研究会全国フォーラム』では、昨年度に行ったJICAインターンシップを通した現地調査を事例として、地域固有の要因により配慮した内容の分析を行い、「ストリートレベルの官僚制論」を分析視点に組み込んだ。これらの学会発表を通して、研究の分析枠組みを改善することができた。第三に、研究に必要なリテラシーの習得があげられる。アジア文化会館に通い、日本でタガログ語の習得に努めた。また研究員の「研究実施計画」の特徴は、援助実施機関の組織性までを分析対象にしていることである。そこで調査対象地で援助事業を行ったJICAの能力強化研修「森林・自然環境分野の開発援助における大学・研究機関の人材育成」に出席して、援助機関側が求める専門性や研究などJICAの組織文化や事業実施レベルの課題などを学んだ。 国外の現地調査は、JICA在外事業訪問の手続きを経た上で行った(2009年11月3日~2010年1月3,日)。この制度を活用することで、JICAフィリピン事務所での情報収集や調査報告が可能になった。さらに環境天然資源省から調査協力も得ることができた。国外の研究成果の一つ目は、村落におけるデータ収集である。3ヶ月間の現地調査のうち半分は、2つの村落に滞在しながら聞き取り調査を行った。具体的な調査成果は、(1)CBFMサイト内の自然資源のリスト化、(2)GPSを用いたCBFMサイト内の個人利用地の境界線測定、(3)生計に関する地域住民への聞き取り調査を行うことができた。二つ目の成果は、フィリピンの環境天然資源省に対する調査と現地調査の還元である。CBFMの担当省庁である環境天然資源省で、調査対象地を管轄しているタルラック州カミリン事務所に、2週間ほど通いながら、情報収集を行った。さらにCBFMサイト内の調査には、カミリン事務所の森林官が同行して地域住民と共に調査補助をしてくれた。この山林での調査は、研究員にとって現場森林官の判断基準や地域住民との関係性を知る機会となった。さらに村落調査の内容は、カミリン事務所の2009年業務報告会で発表した。一連の現地調査に対して、カミリン事務所から、研究員の功績をたたえる賞状をいただくことができた。三つ目の成果は、JICAへの調査と現地調査の還元である。タルラック州の調査の前後に2回、JICAフィリピン事務所を訪問した。調査前には情報収集を行い、調査後にはJICAフィリピン事務所の担当者に調査報告を行った。帰国後は現地調査の概要をまとめた報告書を作成し、JICA東京事務所と関係者に提出した。この報告書はJICAフィリピン事務所の担当者にも共有され、業務において活用されている。
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Research Products
(5 results)