2008 Fiscal Year Annual Research Report
インド洋津波に起因したスリランカにおける再定住事業の実態と住民の環境適応条件
Project/Area Number |
08J07522
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 昌弘 Kyoto University, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 再定住地 / 立地環境分析 / 地縁コミュニティ / ワック / 離散 / 適応 / ローカルNGO / 管理運営 |
Research Abstract |
研究採用1年度目は、GIS(地理情報システム)を用いて、スリランカ全土のインド洋津波被災地と再定住地360ヵ所の情報をデータベース化し、再定住地の立地環境を生活利便性と津波災害に対する安全性の観点から分析し、インド洋津波後の住宅再建の全体像を把握した。 2008年11月から翌年1月にかけてスリランカ・ウェリガマ郡の住宅再建に関する実地調査を行った。郡役所職員への聞き取り調査を行い、住宅再建支援制度の運用実態を把握した。研究対象である再定住地の住民93世帯に対する対面式アンケート調査、再定住地におけるローカルNGOの活動の参与観察調査、ウェリガマ郡内の再定住地の悉皆調査、ウェリガマ郡役所の津波災害復興担当の職員に対する聞き取り調査を行った。 実地調査から、ウェリガマ郡の住民は「ワック」と呼ばれる地縁コミュニティの人間関係と土地住宅を生活手段として重要視していることがわかった。一方で、政府の住宅再建支援策はワックの居住形態やコミュニティに配慮しておらず、居住地移転によってワックが離散していることがわかった。ウェリガマ郡において、ワックが離散した再定住地ではNGOによるコミュニティ・ベースの生活再建支援活動が始動・継続しにくく、空き家の発生し居住環境の荒廃が進行している。 このことから再定住事業において、ワックの居住形態と人間関係を再生することが住民の環境適応条件の重要な要素であるとともに、ワック再生を怠ることは結果的に、住宅地管理・運営コストの増大を招き、住民だけでなく政府にとってもプラスにならないことが実証された。
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Research Products
(5 results)