2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J07572
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上村 淳 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非平衡シミュレーション / 化学反応 / 理論生物学 / 輸送 |
Research Abstract |
本研究課題は、多種多様な粒子が系の中で反応する反応拡散系の挙動を、ミクロな観点からのアプローチにより探索することを研究目的とする。主に以下の3つのトピックにまとめられる。 1.流れのある低次元反応拡散系の異常な振る舞い 圧力差のある境界間を流れる粒子流の中で反応が拡散とともにどのように進むのかという動機のもと、反応A+B→C+D,2A→2Cを用いて、分子動力学法を用いたシミュレーションを行った。2・3次元系の剛体粒子系の一方向の両端に密度差をつけ、高密度側から反応物が流入するような系について、低次元性に起因して反応物が分離しながら流れていくことを確認し、反応による反応物濃度の減衰と空間次元依存性を調べた。この結果は、低次元空間を流れる反応チャネルなどにおける空間次元と反応速度の異常な振る舞いを示すものと考えられる。 2.熱拡散効果と効率 分子動力学法により剛体粒子系を用いて、熱拡散効果およびその効率向上を目指したシミュレーションを行っている。近年、無駄な熱を電気に変える熱電気効果はエネルギー利用の観点からも注目されており、その効率を上げることが大きな目的となっている。そのような背景のもと、まず、質量の異なる2成分剛体粒子系に温度勾配をつけ、その結果、質量の大きな成分が低温側に集積することが確認され、実際にソーレ係数を見積もった。また、イタリア・インスブリア大学のGiulio Casati教授によって提唱されたキャリアの内部自由度を増やすことにより効率が良くなることが剛体粒子系においても見込める結果を得た。 3.相互触媒反応系を用いた細胞モデルとその空間分布 生命活動に代表される非平衡反応系では、反応速度は必ずしも熱揺らぎだけで決定されるだけでなく、反応に必要な分子や成分などがその反応するスポットにあるかないかなども大きく影響する。最も単純な細胞モデルとして2種相互触媒増殖反応系を提案し、剛体粒子を用いてシミュレーションを行った。相互触媒増殖反応(X+Y→2X+Y,2Y+X)に加えて、溶媒粒子(S)とポリマーが衝突すると壊れる(消滅)という反応(X+S→2S,Y+S→2S)も含まれている。2種の増殖反応が対称であると、両者が混ざったスープであるのに対し、非対称(片方(Y)は非常に稀にしか増えない)であると、少数のYのまわりに多数のXが分布するひとつのユニットとして存在し、Yが増殖した場合にはそのYの拡散により、ユニットが二つに分かれる細胞分裂を模したプロセスが実現することがわかった。この結果は、細胞というユニットが作られるためには分子の少数性と溶媒の存在が大きく寄与しているという示唆を与えるものと考えられる。
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Research Products
(4 results)