2008 Fiscal Year Annual Research Report
メタボロミクス手法による植物病理応答の分子基盤の解明
Project/Area Number |
08J07609
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小川 拓水 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メタボローム / 植物免疫 / 二次代謝 / サリチル酸 |
Research Abstract |
「メタボロミクス手法」とは生体成分を網羅的に分析し、遺伝子発現解析と統合することで生体内の代謝変動を一斉に解析する手法を指し、医学、薬学、生物学をはじめとする生命科学分野の全般に応用が期待されている新しい手法である。我々はこの手法を用いて植物免疫応答の誘導機構について調べている。 まず、植物が病原体に「感染」する場合と、防御システムを活性化して「抵抗性」になる場合の代謝変動の経時変化を調べた。「抵抗性」になる場合には、感染した領域の細胞が自殺するタイプ(HR抵抗性)と細胞死が起こらないタイプ(ER抵抗性)が知られている。比較の結果、「感染」系統と「HR抵抗性」系統の初期応答(見た目の変化がない状態)は比較的よく似ていた。一方、「HR抵抗性」系統と「ER抵抗性」系統を比較すると、「ER抵抗性」系統は「HR抵抗性」系統とは全く異なる初期応答を示すことが分かった。「ER抵抗性」は、比較的研究が進んでいる「HR抵抗性」とは異なるメカニズムを介して誘導されている可能性が考えられた。 そこで、各植物系統の病原体接種前の状態を調べた。その結果、「ER抵抗性」系統は、「感染」系統や「HR抵抗性」系統と比較して、様々な代謝物の蓄積パターンが異なることが分かった。「ER抵抗性」系統では、植物免疫応答との関係が深いサリチル酸(SA)の不活性な形態であるSA配糖体が普通より多く蓄積していた。 本年度は、防御関連物質の一種であるSAやその派生物の蓄積パターンに着目することで、植物免疫応答の解析におけるメタボロミクス手法の有効性を実証した。解析過程で得られた「ER抵抗性」系統の特徴的な代謝プロファイルは興味深いものであった。生体成分を網羅的に分析することで、「ER抵抗性」系統のような特殊な植物免疫応答のメカニズムの一端を知ることができた。
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Research Products
(2 results)