2009 Fiscal Year Annual Research Report
モロッコにおける出産、医療開発、身体イメージの変容に関する人類学的研究
Project/Area Number |
08J07614
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井家 晴子 Kyoto University, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 医療人類学 / 妊娠 / 出産 / モロッコ / オーラリティ / リスク / 記憶 / 文化人類学 |
Research Abstract |
2009年度は、長年収集したフィールドデータの整理、アナログテープのデジタル化を含め文字おこしを行いつつ、オーラリティ、記憶といった先行研究の検討を行った。その成果は、以下の学会、研究会において発表された。(1)第43回日本文化人類学会研究大会「身体に根づいた声、紙の上の知識-モロッコ、シュルーフ社会における出産とオーラリテイー」、(2)国立民族学博物館共同研究会「出産をめぐる身体の複数性」、(3)関西アラブ研究会「文字の世界/声の世界のはざまで生きるひとびと-モロッコ、シュルーフ社会における出産の場の分析より-」、(4)『複数文化接触領域の人文学』共同研究会「妊娠・出産の時間性-モロッコ農村部における時間のサイクル・展開・不確実性-」。 (1)では、モロッコ中部のシュルーフの人々の日常の語りを分析することで、彼女たちの日常の語りに「生」がいかにあらわれ、語りが身体にいかに根づいたものであるか見た。(2)では、シュルーフ社会における身体と自己のあり方が西洋的な考え方といかに違っているか、分析した。また、(3)では「ハイリスク妊娠・出産」という概念が彼らにとっては紙の上の知識であり、身体とは結びつかない知識であることを述べた。(4)では、これまでの医療と時間における先行研究では一定に進む時計的な時間を前提としていたのに対し、シュルーフ社会の日常生活でのサイクルとして動く時間、妊産婦の刻々と変化する身体と結びついた、複雑で不確実な時間を検討した。 また、これまでの研究の蓄積を活かして研究の社会的な還元、貢献を積極的に行った。日本の助産師会で講演「日本のお産文化-助産師への提言文化を創る」を行い、助産師にとっても文化人類学的な視点をもつことが有効であることを述べた。また地域の病院、助産院で同時にフイールドワークを行ってきた。これらの成果は2010年度には論文として随時発表される予定である。
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Research Products
(6 results)